1.《ネタバレ》 岡本喜八の愚連隊三部作シリーズの中でももっとも切れた脚本と言ってよいでしょう、この映画は。この三部作はそれぞれのプロットはバラバラですが、共通する登場人物はもちろん佐藤允で、とくに本作で彼は最高のキレ味を見せてくれます。彼と藤田進や加山雄三のやり取りは、粋で軽妙の極みで聞き惚れてしまいました。惜しむらくは、サミュエル・L・ジャクソンの決め台詞“Mother Fucker !”と並ぶインパクトがある「ちっきっしょー」が、前二作ほど聞けなかったことでしょう。 藤田進がまたいい味出してるんですよね。坊さんが召集されて中国戦線に派遣されてきたという、いかにもと言うキャラを大らかに演じております。婚礼シーンの火踊りを観ても判る通り、この映画は『隠し砦の三悪人』のパロディみたいなところが有り、その中で彼が嬉々としてセルフ・パロディに興じるとは微笑ましい限りです。ラストなんか、有名な「裏切り御免!」へのオマージュになってますからね。 加山雄三も結局意外な役どころだったわけですが、この人はヒーローよりも脇に絡む役の方が上手いんじゃないでしょうか。もっとも砂塚秀夫の抱腹絶倒ぶりには大負けしますが(パントマイムで見張りを翻弄するシーンはもう最高です)。 あと今さら言ってもしょうがないことですけど、中国人とはちゃんと中国語(たぶん)で話すのは善いんですが、昼のシーンなんかは白文字を使っているので字幕が全然読み取れないことです。これは当時の東宝映画に共通する欠点なんです。