8.《ネタバレ》 台風が過ぎ、青空が広がる朝が来ると、あの高揚感も何もかもが次第に薄れていく。たぶんあの後あの少年少女たちは何もなかったように鬱屈した日常に戻っていくんだろうな。誰一人三上君の死について理解できないで進んでいくんだろうな。
誰も変容したように感じなかった。三上君の死さえ、変容の結果だとは思えなかった。彼は自己を正当化するために、教師との喧嘩や彼女に連絡がつかないというだけで浅はかに哲学を装って死んだだけだと思った。ピーターパン的に。
つまり、青春時から青年期への通過儀礼的なものではなく、もっと衝動的な中学生特有の集団ヒステリーのような一瞬を、台風のくるドキドキワクワク感とともに描き切った作品であると感じた。
主題ははっきりとあるものの、登場人物の変容が感じられないから、観る人によっては「なんだこの映画、何が残るんだ?」という気にさせられるかもしれない。でもこの映画は、人生に一度しかない中学校生活最後の年の、大人でも子どもでもない彼らの一種の抵抗や反乱や狂気を写真のように切り取った作品なので致し方ない。
台風のひと時だけで人間がそんなに成長してたまるか。
故相米監督の大傑作。