4.《ネタバレ》 非常に観念的な作品。
そもそもあり得ない設定なのですが、登場人物たちの「感情」は非常にリアルで、極限状態に置かれている彼らの「行動」はショッキングなものになりがち。
それらショッキングな部分を見どころにしないと映画として成り立たないので、アリではあるのですが、ちょっとグロい描写が多いため、人を選ぶ作品になってしまったかもしれません。
世の中の不平等、階層、富を享受する人間たちと飢餓に苦しむ人間たち、搾取する側とされる側。それらへの問題提起と、そこに置かれた人間のエゴイズム、生物として生き残るための殺し合い、足の引っ張り合い、侮蔑。
救いは宗教にはなく、心ある主人公ですら原罪を犯す。そこに批判的なメッセージは見当たらない。
原罪を犯しながらも、子どもを見つけるため、主人公と黒人の相棒は命を尽くす。
最下層で見つけた子どもは、「良心」のメタファー。
そして彼らは最上階へ「良心」を届け、役目を終えて死んでいく。
解釈はある程度観客側にまかされており、形而下的な描写で形而上的なテーマを描いているので、観客にきちんと伝わるのかはちょっと疑問に思いました。
深遠なテーマを冒険的・実験的に描いていてとても面白い作品ではあります。ぜひたくさんの人に観てもらいたい作品ですね。