1.《ネタバレ》 命の質、quality of lifeについて見せられる映画だった。病院の規定や国の法律なんかはさておき、患者にとって大事なものは何か、最優先すべきものはなんなのか、それらを考える良いきっかけになる映画だと感じた。
しかしそれとは別に、まほろば診療所のようなやり方は賛否ありそうだなとは感じます。医者でありながら医療行為は最優先とならない現場。在宅医療ってこういうもんなんだと誤解させる危うさはあると思います。ただこういう、可能な限り患者のこと、その意思を優先して治療にあたってくれる先生がいることは純粋にありがたいと思うし貴重な存在だ。ある意味現在の医療では、死の瞬間まで病院のベッドに横たわり機械に繋がれただただいのちの時を永らえさせることのみを目的とされているように思う。そして確かに、自分はそんなふうに生かされたいとは思えない。個人的に、もう自由に動けなくなった時点で死を選びたいと思っていますしそういう意味では安楽死に賛成派であるし。冗談めいたような雰囲気の中の他人との雑談でも似たようなことを言う人はいるが、実際本気でそう思ってる人とかどれくらいいるんだろう。なぜかそんなことを考えた。
面白い映画だとは言えない。咲和子先生や野呂青年の役柄がなんというか、極端に「映画!」って感じで逆に現実味がなかったこととか、病気の女の子と海に入るとか、美談にするにしても少しやり過ぎ感を感じる。だが社会のテーマのひとつとして勉強になったり考えを深める映画だとも思える。特に、治験での治療に文字通り命を賭けその甲斐もなく亡くなったプロ棋士の女性のエピソードは言葉を失い、泣いてしまった。そういう力がある映画だと思いました。
最後にもうひとつ。この映画はコロナ後の映画であるにもかかわらず、作中に登場したIT社長のエピソードは秀逸と感じた。彼はIT畑バリバリの凄腕社長であるにもかかわらず、決してリモートでの就業を是とはしない。あくまで直接現場に立つことを熱望する。その熱量のためか正直傲慢な面もあるが、どうやら社員からの信頼は厚いようだ。治療の見通しが立ちそのことを社員と共有しながら「すぐにそっちに乗り込んでやるから待ってろ」と檄を飛ばし社員たちは喝采で応える。。。胸が熱くなったシーンでした。