12.《ネタバレ》 本作「AIKI」
私はこんなにも「障害者」と真意に向き合った日本映画に初めて出会いました。
主人公の加藤晴彦演じる芦原太一は障害を負ってからというもの最低のロクデナシ。
私は劇中何度も彼の車椅子を蹴飛ばしたくなりました。
そんな彼の閉ざされた心を象徴するかのような、散らかったベッド・・・。
しかし物語の終盤、その散らかったベッドで
彼はそれまで築き上げた自分の力で、
ともさかりえ演じる愛するサマ子と一夜を共にします。
ただただ、涙、涙、涙のベッドシーンでした。
だって彼は良くある日本映画に出てくる「特別な障害者」じゃない。
ただの足の動かないロクデナシなんです。
そんな彼が自力で幸せを、生きる喜びを掴もうとする行為だからこそ
私は涙が止まらなかったのです。
そして、そんな彼が変わるきっかけになった合気道。
彼が車椅子になった葛藤と、この合気道との出会いをリンクさせた事が
この映画の何よりも素晴らしいトコロだと思います。
「なんちゃらボーイズ」や「なんちゃらガールズ」とは
また違うスポ根青春映画のカタチがそこにはあります。
楽しい楽しい青春の1ページなどでは決してない。
彼にとっての「合気道」とは自己の尊厳をかけた戦いだったのです。
何故なら本作で語られる合気道の思想
合気道は相手を拒絶するのではなく、まず受け入れること
それは合気道の修行と同時に
正に障害を追い廃人同然になっていた太一が
自身の障害を受け入れる修行そのものだったように思います。