2.《ネタバレ》 今年が生誕100周年。「高峰秀子・少女スタア時代特集」ラピュタ阿佐ヶ谷で初スクリーン鑑賞。以前彼女の養女、斎藤明美さんのトークショーに行った事がある。そこで認識させられたのが高峰さん自身文筆やインタビューで述べていた「女優嫌い」という性格、斎藤さんの説明によると実際は嫌いどころではなく醜悪・嫌悪の域:出来る事ならやめてしまいたいという類の人生選択肢だった点。年少期からフリーランスとして活動したのもギャラの高いところで働かざるを得なかったから。「彼女が望んだ人生にたどり着いたのは松山監督と結婚し、女優を引退して約25年後。そこまでかかった(斉藤さんのご説明)」輝かしい才能の裏にあった、暗黒の青春時代。 但凄かったのはそんな境遇にも関わらず応援してくれるファン、作品に取りくむ同業者に対して彼女は誠意を持って女優業を全うしていった事。その心意気が「子役出身の名女優」という稀有な存在にさせたのだろう。 戦後の木下恵介/成瀬己喜男監督作は邦画史上の名コンビだけど、戦前でいうならこの作品、山本嘉次郎監督に出会えたのは相当大きかったはず。この年14才(‼)の演技力もさることながら、彼女をより良く魅せる為の工夫、文盲である事の焦燥感をあらわすショットとかラストシーン、新しい職場に向かう彼女の正面を捉えた移動撮影などは当時からすれば外国映画の流れをくんだ、斬新な表現だったのではないか。(またトークショーで印象的だったのは生前の高峰さんが斎藤さんに「この作品に出れたからスターになった」と山本監督に感謝していた事と合わせて、若年期から自分が売れた理由を冷静に分析してたというその才覚)時代を考えれば点数としてはこんなものだけど、彼女のファンには必見の一本。後年の「馬(’41)」と合わせて、どうぞ。