3.《ネタバレ》 「人生は金がすべてだ」、「金が人生の悲劇を生む」それらはすべて正しい。
ただ、自分自身も含めて、日本の、いや世界のその「現実」を、どれだけの人が本当の意味で理解しているのだろうか。
ということを、「ハゲタカ」のドラマシリーズとこの映画化作品を通じて思い続けた。
数年前、この国で立て続けに表立った某IT企業や某投資ファンドによる企業買収劇は、記憶に新しいところだ。
ただし、連日連夜報道されるその様を、一体どれほどの日本人が、自らが息づく国の経済危機を踏まえて見られていただろか。
自分自身もまさにそうだが、一連の騒動を全く別世界の“ショー”でも見るように、無責任に楽観視していた人がほとんどだと思う。
その国民の反応こそが、この国の抱える「危機」そのものだということを、この作品は具現化したのだと思う。
まさにタイムリーな社会性を如実に反映した設定、そこに映画ならではの娯楽性を加味した世界観は巧みだった。
経済情勢に全く疎い者でも、作品の中で巻き起こる顛末と現実の社会での出来事がみるみるリンクしていき、リアルな危機感と焦燥感に繋がっていく骨太な作品だったと思う。
玉山鉄二が演じた中国系ファンドマネージャーの悲哀が、この映画化作品の最たるポイントだった。
世界の底から生き抜き、憧れ続けた日本車メーカーの買収に心血を注ぐ様、そして、最期の最後まで金を拾い続ける様には、ドラマシリーズを通じたこの作品の「真意」が表われていたと思う。
金にまつわる人間の業、そして、罪と罰。
それは、決して否定することが出来ない人間の宿命なのかもしれない。