17.《ネタバレ》 この映画は、ダンツィヒ(現在はポーランド領グダニスク)という都市と20世紀初頭からのドイツとポーランドの関係について多少なりとも知識がないと見通すのが大変かもしれません。そしてブリキの太鼓・スカートの中・オスカルの超能力・小さい人々、など様々な何かを暗喩しているアイテムが散りばめられており、予備知識があればそれらの意味を推測する手がかりとなるのかもしれません。 思うにオスカルの母親アグネスこそが、ドイツ人のアルフレート、ポーランド人のヤン、ユダヤ人のマルクスに愛され、彼女こそがダンツィヒという都市を体現しているんじゃないかと思います。そのアグネスが産んだオスカルが実はヤンの子だということは、ドイツとポーランドの間で帰属が揺れ動いたダンツィヒの歴史の擬人化なんだと思います。今の眼で見ればさほど刺激は感じませんけど、なんか癖の強いエロティシズムが当時は衝撃的だったのは理解できます。オスカル役のダーヴィッド・ベネントがまた映画史に残る怪演子役で、とくにアンナとの絡みは北米で児童ポルノ認定されたってのも判らなくもないです。オスカルがサーカス団に加わって戦場慰問でフランスへ行くシークエンスには独特の味があり、そこで出会う団長べブラが私にとってはこの映画でもっとも印象深いキャラでした。彼こそが肉体的成長を止めたオスカルの完成形なのかもしれません。 二時間四十分のDC版での鑑賞でしたが、観終わってみて私の大好きなエミール・クストリッツァの『アンダーグラウンド』に似ている感じがしてなりませんでした。ユーゴスラヴィアという国家とダンツィヒという都市の違いはもちろんですけど、一つの共同体の崩壊というのは共通のテーマです。でもこの映画には『アンダーグラウンド』でクストリッツァが訴えた哀愁とノスタルジーは微塵もなく、時代に流されて消えてゆく人間像が前面に出ていたように感じます。これは監督シュレンドルフというか原作者ギュンター・グラスの個性なんでしょうね。 【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-11-22 23:07:12) |
16.《ネタバレ》 壮大な叙事詩というかホラ話。一人の男(でも、少年)を通じての年代史で面白くないはずがない。長いが退屈せず。 【にけ】さん [映画館(字幕)] 7点(2019-01-22 13:00:01) |
15.《ネタバレ》 原作では判りませんが、映画においてはサーカス団、後の慰問団でオスカルの師となるベブラ師との邂逅が大きな意味を持つように思います。身体は成長しないけど精神は成長するオスカルにとって、その存在を見抜いているベブラ師というのはオスカルの完成形でもある訳です。オスカルはブリキの太鼓を叩いて大人の欺瞞に近づく精神の成長をも拒否しようとするのですが、子供染みた行動でオスカルを保護してくれる周囲の大人を死に追いやってしまう狂気に、戦争と父親の死をきっかけに別れを告げて西側?の新世界で成長を再開して生きて行こうとする所で映画が終わります。私は反ナチズムとか反戦がこの映画の主題ではなく、この時代の狂気とオスカルの狂気が同じ位で違和感がない、と言う所がこの映画の主題なのかなと感じました。ややグロテスクで難解なのでこの点で。 【rakitarou】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-10-29 16:33:15) |
14.第二次大戦下のいろんな民族が混在している東欧地域で、フリークスの目から観たドイツ、ソ連とポーランドの間で翻弄される人々を描いた異色作。地域の特性や歴史的背景を知らないとわかりにくい描写も多く、鰻やらグロい場面もあるので万人向けではないでしょうが、映像的に観るべき場面は多いと思う。 映像から独特の東欧の空気感みたいなものが感じられ、どよんと曇りがちの空模様、ラスト近くの平原の景色、シワの刻まれたばあさんの表情の余韻も良い。 【クリプトポネ】さん [DVD(字幕)] 7点(2017-08-13 13:55:38) |
13.《ネタバレ》 これほど重苦しい暗黒史を体感した映画は他にはない。ただ性や暴力を過剰で陰惨に描けば良いのではなく、皮膚感覚で訴えるタールみたいな異臭と粘り気が正確なのだ。大人の醜い世界を覗き、成長を拒んだ少年はいびつで異質な存在。いつまでも大きくならず、太鼓と奇声でガラスを割る光景がどれほど不気味なことか。馬の頭で鰻を獲ることの不気味さ、"子供同士"で性交していることの不気味さ・・・現実と寓話の区別が曖昧だからこそ"不気味"で、如何に不安に覆われた時代かを物語っている。第二次世界大戦後、少年は大人になることに再び向き合い、家族と共に西側の新天地に向かう。ハッピーエンドになるとは限らないが、姑息な社会不適合者が如何に現実と折り合いを付けるかを一定の距離間で見届けているようだった。 |
12.ディレクターズカット版を鑑賞。 いやー、久しぶりに性と死を生々しく描いた作品を見た。 健康な精神状態だと楽しめないと思うが、ほどよく落ちていたので、この欲望渦巻くカオスな世界観を楽しめた。 子供にそこまでさせちゃっていいの?と思うシーンが多々。この監督は変態だな(笑) |
11.オスカル君の気味悪さは映画ならではのストレートで迫ってきます。ずっと生き続ける祖母をポーランドに残したまま、成長を再開するオスカルは西へ行ってしまう。これはどう考えればいいのか。ポーランドに残って成長していくってのなら分かりやすいが。彼の太鼓は、軍楽隊のリズムをワルツに変えもするが軍隊の慰問にも使われる。不快に思っても政権から離れられない「芸術」と見てそう間違いではないと思うが、母の死以後の部分がよく分からない。でもそういう“分からなさ”が寓意の豊かさで「きっと深いんだ」と思わせられるのが、芸術映画の得なところ。 【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 7点(2013-03-14 10:00:50) |
10.《ネタバレ》 ドイツ人の父とポーランド人の母を持つオスカルが大人達の醜い所を見て大人になりたくない。そう決めて自ら成長する事を拒む。それは「早く大人になってお姉さんみたいな綺麗な人といっぱいお付きあいしたいから」と叫ぶクレヨンしんちゃんとは全くもって正反対である。しかし、そうは言うものの共通点もある。それは共にガキのくせしてませている。女好きでスケベであるという所などそっくりである。そもそも子供なんてそういうものではないだろうか?特に男にとって、まだ幼い少年にとっては女の人を見ると母親の姿とダブらせようとしたくなるものでないかとこの少年を見ていると思ったりします。ブリキを常に離さず、本当の友達はブリキだけなのかもしれないこのオスカルの何とも哀れなこと、大人なんて信用出来ないから自分は一生子供であり続けよう、そうやって大人社会を否定し、常に大人に対しては冷めた視線で見ている姿は何かに対し、怯えているようであり、その怯えという意味では初恋の相手だった少女マリアとの再会の後の場面にも現れているように思えます。二人きりで脱衣場でいる場面、裸のマリアにしがみつくオスカルの姿は自分をこのような人間へとしてしまった母親へのやるせない気持ちみたいなものが感じられる。それにしてもあの海から大量に打ち上げられたうなぎと牛?馬?どっちだ?の気持ち悪さと新しいブリキを買ってもらいに寄った店で沢山のブリキの横に置かれていた人形の不気味なまでの目付きの怖さ、更に怖いと言えば周りはどんどん歳を取って大きくなっているのに自分だけは三歳時と変わらない姿でいるなんて、想像するだけで怖いです。だって、周りは皆、大人の遊び、大人しか立ち寄れない映画館やレンタルコーナーにも堂々と入っていけのるに自分だけ一人入っていけない。そう考えるとって、すいません。何アホなこと言ってるんだろう?とにかく色んな意味で怖い映画でした。 【青観】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2009-05-05 11:39:42) |
|
9.この映画の鑑賞後、オスカルのイメージが「ベルバラ」のオスカル様から太鼓のオスカル君に一変いたしました。ところで、この不条理な世界、あの叫び方、何かに似てるなぁ・・・と思ってたら、やっと思い出しました。あれだ、楳図かずお氏だ。 【くなくな】さん [DVD(字幕)] 7点(2008-10-21 22:41:04) |
8.長くて重い作品ではあるが、アイデアの面白さとオリジナリティの高さにまずびっくりする。 その点では、30年、あるいは50年に1作、出るか出ないかの凄い作品でなかろうかと、私は睨んでいる。 年数に根拠は無いが、つまりそれだけ希有で傑出した作品であるということだ。 とにかく、死ぬまでに1度は観ておくべき作品である。 【あむ】さん 7点(2004-06-13 21:36:22) |
7.いやはや何と言うか、不気味であるが決して不快ではなく、奇妙に居心地が良かった。しかし、アレは3歳じゃなかろ。印象に残ったのはオカンをはじめとする大人がセックスのことしか頭にない中で、唯一プラトニックな存在だった(と思う)マルクスが死んだ時。「むかしむかし、太鼓たたきがいた。名はオスカル。むかしむかし、玩具商がいた。名はマルクス・・・」あのナレーション、子役とは思えん。凄い。 【山岳蘭人】さん 7点(2004-04-29 20:53:25) |
6.レンタルや放映などで数回観ただろうか。生理的に馴染めないし気分も悪くなるのだが繰返し観てしまうのは、作品の力強さに魅かれるのだろうか。こんな映画は他にはない。嫌悪を感じるエロチシズムもリアルなのかも知れない。 【じふぶき】さん 7点(2004-02-16 09:51:06) |
5.後味の悪さはなかったが、考えさせられるわけでも心に響いたわけでもないのに、なんか印象に残る。「どんな映画?」と聞かれたら「とりあえず見てみなよ」と言ってしまうなあ。完成度は高いと思う。 |
4.これは・・・想像以上の気味悪さ。 R-15指定だが、残酷だとか、Hなシーンが多いとかってこともない。でも、決して子供に見せてはいけない何かがある。 「何が」とは言えない。 でも、意図した不気味さが映像全体から醸し出されている。 あと、効果音の使い方も。 主人公の少年は複雑な父と母とその愛人の関係を子供ながらに感じ取り、醜い大人になりたくないと心に決めてみずから成長をとめてしまう、という目茶苦茶な設定。 演じているのは、本当に子供なのか、小人症の大人なのか、よく分からないが、とにかくおぞましい表情を見せてくれる。 あー、説明するのが難しい。というか、おぞましい。 冒頭のシーン。芋畑で焚火する女。警官に追われて逃げてくる小男。女は小男に頼まれてスカートの中にその男を隠す。・・・これは主人公のおじいさんとおばあさんのなれ初めの話。想像できますか?「まさか・・・」という想像が当たったので、吐き気がした。 快活な子供の声のナレーションが余計に不気味。 全体的にそういうトーンのカルトムービー。 気持ち悪いが印象深い。1979年西独の映画。 興味が湧いたらご覧あれ。ただし、ビデオはなかなか見つからないと思う。 【よしの】さん 7点(2003-11-22 16:23:23) (良:1票) |
3.グロテスクな場面もあり、かなり後味の悪い作品だが、この嫌悪感が主題ともいえる。大人の汚れた社会の反発から、3歳で自らの身長の成長を止めたオスカル。その後オスカルの目を通して伝えられる、大人の醜い社会。オスカルはひたすら奇声を上げることで、現実逃避する。グロテスクな場面はオスカルにとっての醜い社会、だから嫌悪感こそがオスカルの心の内なのだ。最後、醜い社会の元凶である大人が死んだ後、成長を始めるところは何とも皮肉な作りだ。 【ゆたKING】さん 7点(2003-03-22 16:05:53) |
2.オスカルの出産、馬の頭で鰻漁、小人のサーカス、魚を貪り食う母、など幾つかグロテスクなシーンがあった中で、オスカルの異様に見開いた目が、私には最も気味が悪かった。その一方で、海が出てくるシーンはどれも美しく印象深い。映画は戦争を最たるものとして、大人の汚さ、おぞましさを、自ら成長を止めてしまったオスカルを狂言回し的存在として描いている。私には、オスカルはこの大人達の愚行をあざ笑う悪魔のような存在であり、ブリキの太鼓やガラスを割る超能力はその象徴とも思えた。 【クロマス】さん 7点(2003-02-05 17:53:40) |
1.怖いもの見たさ(?)で観ました。グロテスクなシーンが多々ありましたが、確かに主演のダビット少年は、天才子役といっても過言ではないでしょうね。観賞後は、何とも言えない殺伐とした雰囲気に酔ってしまったという感じです。 【リリー】さん 7点(2002-10-23 12:11:33) |