1.《ネタバレ》 映画自体は結構面白いと思いますよ。但し原作は読んでいなくて、"このミステリーが凄い"という本の中で照会されているのだけど、観た感想で先ず言いたいのは"本当にミステリー?"って事。確かに、主人公からして謎めいているし、私立学校における様々なスキャンダルと、主人公の教え子の失踪が複雑に絡んでいるけれど、あまりミステリアスには見えませんでした。私立学校の大学開設におけるスキャンダルについて、物語の中心にある話なのに、最終的に放置する意味も分からないし、主人公からみれば教え子を救い出して、元妻とよりを戻してオシマイ、で良いかも知れないけど、後日譚はどう処理されているのか非常に知りたい所だよね。まさか続編を作って見せるほどの尺があるとも思えないですしね。同様の事は随所にあって、例えば主人公の元妻といた、恋人らしき建築家の存在は電話が来ても切っておしまいという形で、観てる側が納得できるのか、とかね。
それにクライマックスなんだけど、取り壊される予定の校舎になんで木刀が、それも、なんであんな所に、しかも廃校舎で且つ、主人公は10年前に辞めているのにあるのか、なんて疑問もあるけど、それ以上に、女子高なのに必要なの?という疑問が沸々と。この辺がさっぱり分からないんですよね。見た感じ、完全なお嬢様学校で、素行不良な学生が居たとしても、必要とは思えないんですよね。
10年前の出来事にしても、一介の保護者の意見で、しかも私怨である上に、賛同を得たからといって映画を観ている限りは法的に触れることは何もしていないし、訴えられれば学校側が負けるに決まっている状態なのに、解雇という事態に陥るかが疑問ですね。風聞を気にして失職させるという事は考えられなくも無いですが、裁判で負けた場合の方が世間の風聞は怖い筈です。そうした物語の動機付けの弱さを隠すべく映画は苦心しているのかもしれないけど、あたしがこういう疑問を持ってしまうという時点で、物語自体に問題があるって事では無いでしょうか。
役者陣は特に問題のある所はないけど、窪塚の演技の面白さは凄いと思いつつも、ああいった怪演しか出来ない役者と見られているのだとすれば、残念ですね。怪演が出来るから良い役者という訳でも無くて、普通に演技が出来てその上で怪演が出来るという所を見せられて本当に良い役者だと思うのだけどね。