3.アニメーションと実写の“境界線”はいよいよあやふやになってきている。
砂漠に生息するありとあらゆる生物をデフォルメしたキャラクターたちが、縦横無尽に動き回る明らかにアニメーションでしか表現が出来ない映画世界を観ながら、「ほんとにアニメ?」と圧倒的な映像に唖然とした。
“渇き”と“潤い”、この相反する二つの要素が、この作品における核心で、その表現のクオリティーの高さが圧巻だったと思う。
ストーリーとしては、ある意味真っ当な「西部劇」であり、映像世界の革新さに反して目新しさがあるわけではなかった。
序盤の世界観の説明的なくだりは、やや冗長な感じもあり、全体的にもう少しタイトにまとめてくれた方が観やすかったとは思う。
主人公のカメレオンは、“カメレオン俳優”気質というキャラクター性も含め、声を担当したジョニー・デップそのものだった。
昨今のアニメーションの技術は凄まじいので、声を演じる俳優の“演技”が、そのままアニメのキャラクターに反映されるということを改めて感じた。
監督が、「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズの監督ということもあり、主人公のキャラクターが“ジャック・スパロウ”と似通い過ぎているとも感じたが、徐々に今作ならではのキャラクターとして成熟していき、魅力的になっていったことは良かった。
充分に面白い娯楽映画に仕上がっていることは認める反面、あと一歩乗り切れない感じが残った。
それは、「西部劇」という映画のジャンルそのものが、アメリカ人の精神に深く根付いているものであり、よほどそのジャンルに精通していなければ異人には完全に理解し難い要素が多分になるのではないかと思えた。
最後にもっとも残念だったのは、“西部の精霊”について。
あれほど“モロ”なキャラクター描写をするならば、何とか「ご本人」の出演を実現させてほしかった。
大きなリスペクトを伴ったパロディなのだから、出演交渉はそれほど難しいことではなかったと思うのだが……。