8.《ネタバレ》 ティムバートンの美しいダークファンタジーを久々に見た。
荒んだ家族風景は軽く”アダムスファミリー”を連想させる。
色褪せて寂れた港町の雰囲気と、オープニングの音楽がもう最高。これは死ねる雰囲気だ。
自分は音楽に詳しくないので誰が歌っている曲かは知らないが。
この映画は
ヴァンパイアと現代とのズレがウケる。
吸血鬼の数々の伝統がコメディによって消されないのは監督の匠の技といってもいいかもしれない。
怪奇とコメディが両方とも生きている。これはたぶん手腕がないとできないと思う。
しかしジョニーディップの吸血鬼役に自分は違和感を少しだけ感じてしまった。
ティムバートンは自身が好きであろう怪奇趣味を元手に、そこにとらわれることない面白い作品を大量生産する様は
まるで魔術師のようだ。
ただ、ティムバートンが最も得意とすると思えた吸血鬼幻想という題材であるが、
その手のジャンルを極めた彼にとってはあまりにも今さら感というか手慣れた感が出てしまい、ストレートで面白みに欠けるものになってしまったのかもしれない。
ストレートとはいえ他のヴァンパイア映画にはないユーモアや様々な視点を取り入れて成功しているのは
やっぱティムバートンは巨匠であり、こういった趣の美意識の体現者であるからだと思う。
ヴァンパイア映画で描かれるべき悲壮感はちゃんとあった。
人を結びつけるのは愛であるか所有であるのかというのが一つのテーマではあったと思う。
最後で愛を訴えた魔女の肉体は干からびて脆くひび割れて中身は空洞であった。それは彼女の心の表れでもあったと思う。
もしそれが本当の愛であったなら彼女は干からびることなく彼女の中身は空洞には決してならなかったと思う。
近代ヴァンパイア映画のクィーンオブバンパイアという映画はロックミュージックとヴァンパイアを融合したような内容だったと記憶しているが、
このダークシャドウも少しだけその流れをくんでいるのかもしれない。
ティムバートンの映画って、悪女とか魔女が多い確率で出てくるような気がする。