1.《ネタバレ》 「ハート・ロッカー」でオスカーを手にした時は、実績不足な印象だったキャスリン・ビグロー。しかしその後「ゼロ・ダーク・サーティ」では、緊張感を保ったままドラマを深く切り込むブレない手腕に驚嘆した。本作「デトロイト」でも、その演出は健在。これまで扱ってきた戦場とは異なり、舞台はモーテルという密室だ。尋問する側とされる側、10人ほどの登場人物の間に張りつめる緊張感は、人種差別、殺人、死、そして夢が複雑に入り組んだ感情を伴って、居心地が悪くとも目を背けるわけにはいかない。事件の後の裁判の描写がやや長く感じるが、登場人物それぞれの背景を描きながら人種差別の歴史の奥深さを語る上で避けられない部分か。 なお、賞レースではほぼ無視されている本作だが、人種差別が題材で賞レースを賑す「ゲット・アウト」より、確実に将来には大事にされるべき作品だと思うのだけど。