1.《ネタバレ》 文学的なるものの映像化、という点で、とてもよくできた映画だったと思うわ。
文学世界を映すような、静かでしっとりした映像にウットリ。
過去部分の、東出昌大と夏帆のドラマの、ひたすら抑制された演技、淡い色調、明確なコントラスト。どれもとても美しく。
それに対して現代部分の、黒木華と野村周平のドラマはモノトーンとカラフルの対比、静と動の対比で面白く。
ここまで気持ちいいレベルのライティングの映画って、なかなかないわ。
そういう、技巧を凝らした世界の中で文学について奥行き深く探ってゆくような作風がとても楽しく、また心地良く。
肝心のクライマックス部分、真実が明らかになる部分が、なぜかとても陳腐になってしまって、あそこさえなければ今年のベストテンに入るくらいに良かったのに、って感じで本当に残念。なんであの伏線が張ってあった仕掛けをオチにしなかったのかしら? アレだけで十分で、その後のカーチェイスと堤防のアクションは完全に蛇足、アレで映画がすっかり弛緩しちゃったわ。
それでもここ最近の邦画の中ではかなりハイレベルな作品ね。他が酷いの多過ぎなのだけど。
そうそう、これを見る前に森田芳光の『それから』を見ておくべきなのかもしれないわ。アタシは見た事がないのだけれど・・・