3.《ネタバレ》 あの3.11から9回目の3月を迎えたタイミングでの公開。
10年目の方が区切りが良い気もしたが、現在のウィルス災害をふまえると意外にタイムリーだったかもしれない。
あの当時「1F」と呼称されていた「福島第一原発」の内部で、いったいどんなことが起こっていたのか、どんな戦いがあったのか……
知られざるドラマが今回初めて映像化されたことに本作の意義がある。
そしてスクリーンに再現されるあの津波シーンには久しぶりに心が痛んだ。
本作は当事者への丹念な取材を行った原作にほぼ忠実に各シーンが再現されており「真実の物語」とのキャッチフレーズはあながち誇張ではないだろう。
セットの再現力や専門用語から作業員の動きまで、関係者によく取材していることが伝わってくる。
特に緊急時対策室(緊対)でのトイレの様子や、落ち着いた時に口にする備蓄食糧といった何気ないシーンも入れているところも好印象。
また俳優陣も豪華な顔ぶれで見応え十分。
本作では東電と政府、原発内部やその家族に避難民、さらには自衛隊や米軍など様々なドラマが展開されるが、はやり一番の見どころは、電源喪失後の中央制御室で、炉心溶融(メルトダウン)による放射線漏洩という最悪の事態を防ぐために、手動にてベント作業に挑むシーンだろう。
その意味では最後に残ったと言われるfukusima50「以前」のストーリーが実はヤマ場だった本作。タイトルは若干ミスリードだったかもしれない。
ともかく、あれだけの事故で被爆による犠牲者が出なかったことに改めて驚くと共に、あの時2号機の格納容器が破裂しなかった理由も未だに謎であるなど、今回改めて知ったことも多く、観て良かったといえる作品だった。