2.《ネタバレ》 作品の舞台はケネス・ブラナーが少年時代を過ごした出身地である北アイルランド、1960年代末。
冒頭からこの時代を描いたアイルランドの映画らしい不穏な空気が漂いますが、
子どもの目線で当時の日々をとらえたユーモアと、ブラナーが少年時代を振り返る郷愁や哀愁がいい具合に入り混じる。
巨匠のこの種の映画は少なくないですが、長いこと生きていると、たまに子どもの頃を妙に懐かしく思い出す時がある。
決まってそんな時には色んな感情が入り混じる。そんな時、やはり映画人はこんな映画を撮りたくなるのだろうか。
テレビでは「リバティ・バランスを射った男」や「真昼の決闘」といった西部劇をやっている。
家族で映画館に見に行った映画は、お父さんが見たかったのかな?ラクエル・ウェルチの「恐竜100万年」に、
子供には楽しくてたまらない「チキチキ・バンバン」。ケネス少年が当時夢中で見ていたのであろう映画が次々登場する。
厳しい日々の中、こうしてブラナーは映画の世界に夢を膨らませていったんだろうな。
僕が初めて父親に連れて行ってもらった映画も「チキチキ・バンバン」だった。楽しかったなあ。
そういえばこんなことがあったなあと、自身の思い出と重なるのもこの種の映画の良さだと思います。
作品に響く、不穏な時代に生きる北アイルランドの庶民の強さとも重なるような、
ブラナーと同郷の偉大なシンガー、ヴァン・モリソンの力強い歌声もまた良かった。