3.《ネタバレ》 当時はこの主演女優が好きだと思っていなかったが、改めて見ると冒頭からPV風の映像になごまされる。以降も全編にわたり清純で邪気がなく愛くるしい様子に心を奪われてしまい、この人がいるなら劇中に出る全てのことをそのまま大らかに受け入れたいという気にさせられる。初見時から30年を経て、やっとこの映画の本来の見方が感得できた気がした(要はアイドル映画だということだが)。
内容に関しては、まず少なくとも前半はまぎれもない青春コメディであり、ギャグとおちゃらけの連続のように感じられて真剣な顔で見るべきところはほとんどない。また後半は表面的には深刻になるものの、さりげなく“頭痛が痛い”というような台詞が挟まっていたり、クラシックまがいの大仰な背景音楽も苦笑を誘うので、とりあえず今だけ真顔を装っていると思わせるものがある。それでこそクライマックスでの羽目を外した展開にも、待ってましたとばかりに違和感なく同調できるのだった。
一方で全編を通じて特に印象的だったのがヒロインの母性的な愛で、ちょっと情けない幼馴染みの彼に向けた思いやりは見る者の心をくすぐる。これも父母が彼女に寄せていたあふれるほどの愛情を分け与えていたということだろう。終盤の展開も、彼女の超能力というよりは愛の力が全てを解決に導いたのであり、結果として高見沢みちるが八王子の自宅へ無事に戻れたのは泣かせるものがあった。
ラストでは星の王子が新宿の空から笑顔でヒロインを見守っていたが、どうやら彼もまた彼女の「広い大きな心」に打たれたらしい。そうすると冒頭に出ていた映画の趣旨説明も、実はこの王子が語った言葉そのままだったのかと思わせるものがある。結果的には劇中世界も見た人も、全てを暖かく大きな愛で包み込もうとする映画と感じられたのだった。
そういうわけで感動的だったので、記念に「時をかける少女」(1983)と同点をつけておく。
それにしても原作者(校長役で出演)は、真面目な作品をこんな映画にされて何とも思わなかったのか。