8.《ネタバレ》 冒頭の姉妹の会話のシーンで、短いセリフを役者さんの正面アップで繋いでいくのを見た時に「しまった…」と思いました。こんなセンスのカケラもないカット割りの作品を2時間以上も見るのは正直辛いなあ…、と。
しかし、徐々に作品に入って行くことが出来ました。大きな感動や笑い、大胆な話の展開などは有りませんが、それぞれの立場や生き方は違うが強い絆で結ばれた姉妹にはとても好感が持てました。
長女は本家ということも有り蒔岡という「家柄」を守り、次女は姉妹という「家族」に配慮して、三女は自分という「個人」を曲げずに、四女はそれらに囚われずに自由に生きていきます。
日本の戸主・家制度の中の家族の有り方が時代とともに変わっていくのを、象徴的に表わしているようにも見えます。
長女と次女の、それぞれの立場を背景に互いの意見を主張しながらも、信頼と愛情に溢れている関係性は見ていて心地良かったです。岸恵子さんと佐久間良子さんの演技力に依る所も大きかったと思います。
特に三女の身の振り方が定まった時の「あの人粘らはったなぁ。」「粘らはっただけの事あったなぁ。」という2人の会話のシーンは、妻であり姉である女性の懐の深さを見事に表現していると感じました。
石坂浩二さんの良い意味で毒にも薬にもならないキャラクターと演技は、重要だけれども目立つ必要のない役どころには、見事にハマります。
メインの役者さんはみんな上手で安心して見させて貰いましたが、侍女のお春がそれだけにもったいなかったです。
江本孟紀さんが出てきた時には、作品をぶち壊されるのではないかと思いヒヤヒヤさせられました。
最後まで何も喋らずにいてくれたことでホッとしましたが、結局、本編と関係のない所でスリルを味わうことになってしまったので損をした気分です。
春の桜や秋の紅葉を背景に、和服を着た女優さんがロケーションに溶け込むかのようなシーンは綺麗でしたが、何度か出てくる夕景のシーンはどれも美しくなく、確実に数カ所は作品の足を引っ張っていたと思います。