13.《ネタバレ》 売春防止法が施行されるか否かという政治的な背景をバックに娼婦として生きる女たちの日常を描いた溝口健二監督の遺作。実際に売春防止法が施行される以前に作られているので題材としては当時非常にタイムリーな作品だと思う。ドラマとしての見ごたえも充分でインパクトもあるし、決して完成度は低くないと思うけど、それでも溝口作品としてはちょっと物足りない気がする。(こちらの求める要求が高すぎるのかもしれない。)ラストの女の子がちょっと怖かったのと黛敏郎の音楽が印象に残る。 【イニシャルK】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2021-10-28 18:01:03) |
12.巨匠溝口&あやや(若尾文子)の佳作。二人とも、代表作は他にあると思いますが、堕ちた女性を描いており、溝口の実力を示していると思える。 あややも良くついてきていると思う。他の女優も絶品。今では、つくれないだろうなあ。 【にけ】さん [映画館(邦画)] 7点(2018-12-21 13:19:22) |
11.《ネタバレ》 売春禁止法案が議論されているという設定。そんな中、この商売の世界の必要性をとうとうと語るシーンがありましたが、まぁわからんでもないですよね。迷惑かけてないしウィンウィンだし税金も納めてるし、なにより、こういう世界でしか生きられない人たちというのがいるんでしょうね。それぞれの女たちのそれぞれの末路が描かれるわけですが、やっぱりあの親子のエピソードが一番ぐっときますね。息子のためにやってるのに理解されず、しまいには大声で歌って頭おかしくなっちゃう。切ないシーンでしたわぁ。 【あろえりーな】さん [地上波(邦画)] 7点(2015-06-02 20:33:59) |
10.《ネタバレ》 誰しも好きで娼婦になった訳じゃない。かといって売春防止法が通れば生きていけない。高度経済成長? もはや戦後ではない? 「子供のミルクひとつ買えないで何が文化国家よ!」 時代が変わりゆく中でもがく女たちの様々なドラマを派手に飾ることなく描く。誰が主人公という訳でもないが、京マチ子、若尾文子、木暮実千代ら有名女優を抑えて、しづ子がすべてを持っていった印象…。あのラストシーンは強烈な一撃だった。 【リーム555】さん [DVD(邦画)] 7点(2011-10-04 21:24:06) (良:1票) |
9.普段は職場でイジラレ役の新人クンが、宴会の席で、実は風俗の常連だということを暴露された途端、先輩達から尊敬の眼差しで見られる、ってのはよくある(?)話ですが、まあそういう、みんなが知ってるようで知らないようでホントはどっちなんだよ、という風俗産業、売春宿が本作の舞台。ん~。正直、この雰囲気、苦手だなあ、こうもアタリマエのように、まるで健全であるかのように、描かれちゃうと。そりゃま、悲惨一辺倒ではないところがポイントではあるのですが、ヘンタイ性の部分には触れずにアッケラカンと描いているのには、どうも違和感というか何というか、納得いかんのです。ヘンタイ性も描くべきです(キッパリ)。とは言え、娼婦たちそれぞれの人生が多層的に描かれていく様は、映画が進むに従い、目が離せないものとなってゆきます。映画の尺が短いこともあって、なかなかに濃密な映画世界です。注目は、女優たちの演じる娼婦たちそれぞれの生きざま、に加えて、黛敏郎の不安をさそう音楽、な訳ですが・・・アヴァンギャルド全盛の時代に、最前衛の電子音楽を取り入れた割には、曲想自体は比較的落ち着いたものだと思います。ぽよ~ん、ひゅるひゅるひゅる。いっそ『天地創造』でも、ヤっちゃえばよかったのに。 【鱗歌】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2011-08-06 21:32:50) |
8.「夢の里」の人間模様。遊郭モノにありがちな、殊更おどろおどろしく描かれる男女の絡みや同性の取っ組み合いはありません。そのようなものが無くとも、個性がそれぞれ際立っている五人から共通して「生き抜いてやる」意志を感じた見応えのあるドラマでした。ですから、ゆめ子には何としても快復して欲しいと思うのです。余韻が残るラストシーンの演出が見事です。 |
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7.情緒あふれる人間ドラマ。売春せざるを得ない状況がうまく描かれています。 【すたーちゃいるど】さん [DVD(邦画)] 7点(2008-08-12 22:53:38) |
6.女5人それぞれの全く異なるキャラクターを描き分け、5人ともがそれぞれのカタチで社会に翻弄されてゆく姿を見せてゆく。赤線が舞台というなかで、最も肌を露にする京マチ子にも人気ナンバー1の若尾文子にも艶っぽさは見当たらない。ところが病気の夫と赤子を抱えて疲れきった表情をして生活臭がプンプンのうえにあえてメガネをかけさせて艶っぽさを排除したかのような木暮実千代が妙に艶っぽい。『祇園囃子』のような艶っぽさじゃなくてもっと生々しい艶っぽさ。結婚を決意して赤線から逃げ出そうとする女に対し、木暮実千代の夫が「こんなところに帰ってくるなよ」と送り出すのはいいが「こんなところ」「最低の場所」といった言葉が執拗に繰り出される。自らの病気のためにその最低の場所に女房を働かせに行かせておいて。病気とはいえ、なんとも身勝手で情けない男。ラーメン屋のシーンでも二人の立場が象徴的に描かれている。5人ともに降りかかるそれぞれのドラマがきっちりと描かれ、その一つ一つが当時の社会と女性の立場を露にしているのだが、溝口監督はその中でも木暮実千代のシーンを重要視して撮っているような気がしてならない。それほどに木暮実千代は誰よりも不幸なドラマを持たずして誰よりも不幸な境遇にあり、誰よりも現実に生き、誰よりも強く描かれている。だから艶っぽくて美しいのだと思う。溝口健二の遺作。溝口の現代劇をもっと見たかった。 【R&A】さん [映画館(邦画)] 7点(2008-03-05 12:57:30) (良:1票) |
5.当時天才と謳われた音楽担当黛敏郎氏、挑戦的というか実験的といおうか、この作品でも賛否両論を巻き起こしそうな音楽を作曲されてますね~。小菊さんや↓他多数の賛同者の方と同じく、私もどちらかといえば否定派。まるで怪談映画のような♪ヒュ~ドロドロドロ~♪確かにインパクト大だけど、果たしてこのストーリーとリンクしてるかどうか甚だ疑問。この黛氏、小津安二郎監督「小早川家の秋」のラストでも荘厳な音楽を流し観客の不安をやたら煽っていましたけど。(←この作品では効果的でした)80年代に五社監督の映画等で、女優さんが娼婦や芸者を嬉々と演じていた映画が数多くあったけど、何か「娼婦を演じる事が演技賞への早道」みたいな悪しき慣習がこの作品あたりからすでに出来上がっていたような気がしてちょいと歯がゆい・・・もちろん女優の質も演技も、この頃の方が段違いに上なのは間違いないけれど。ミッキー=京マチ子の「八頭身やっ!」では場内一斉に笑いの渦。同じタイミングで他のたくさんのお客さんと笑えるって、映画館ならではのすごく幸福な気分。京マチ子は楊貴妃じゃダメ、ミッキーみたいな役どころこそが本筋だと思います。今回はスケジュールが合わず見逃しましたが、同監督同系列作品「夜の女たち」も機会があれば映画館で観てみたい。 【放浪紳士チャーリー】さん [映画館(邦画)] 7点(2007-09-22 13:37:48) |
4.溝口映画を観ていると、他人の生活の中に自分がまぎれこんでじっと覗き見しているような気分になります。例えば押入れの中とか箪笥の中にこっそり忍び込み、じっとそこで繰り広げられるドラマを覗き見しているような。徹底した長回しと役者の極限ともいえる演技を引き出す溝口監督の演出力はやはり偉大です。この作品も観ているうちに引き込まれ、もはや映画を観ているとも思えず、自分が吉原の売春宿のあちらこちらに潜んでただただ覗き見しているような錯覚を覚えます。そこには倫理の押し付けも過剰なドラマもなく、ただただリアルな光景が展開され、但しどの光景を切り取るかの選択という編集の力によって、1時間半弱の覗き見体験がただの覗き見ではなく映画鑑賞という娯楽に昇華される。この「赤線地帯」は一般的に代表作とされる時代物ではなくまさに当時の現代劇な為、この覗き見感覚を最も感じさせてくれる作品です。自分の今いる世界とは違う世界にトリップできる最もお手軽な行為が映画鑑賞であるとすれば、溝口作品が最も偉大な映画であるといっていいのではないでしょうか。 【Sean】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-08-13 11:42:05) (良:1票) |
3.何かお化けでも出てきそうな始まりに(おや?いつもと違うぞ)と思いながらコーヒーを啜っていると、どうやら音楽が奇妙なだけでそれからはいつもより少し明るい映像の溝口作品が始まった。吉原遊郭のネオンに彩られた狭い路地をフラフラと行き交う男達を、あの手この手で引っ張り入れる女達の姿を映し出してゆく。面白おかしく表現してはいるが、彼女達一人ひとりの抱える問題は大きく、世間の風当たりも冷たい。器量とずるさが無ければ抜け出せず、そうでない者は年を取り、行き詰まる。何時の世もそうだ。力のある者だけが笑う。だが強い者だけでは生きて行けない。光と影は一体なんだ。弱い者が消えれば、強い者たちから影は生まれる。かっこつけたがそんな感じがするんだ。社会からも身内からも蔑まれながらも空元気で生きていく彼女達の姿が立派だった。現代のクリーンすぎて面白みの無い街づくりや何かにつけ過剰に反応する逃げ道の無い社会批判に警鐘を鳴らされているようでした。それにしてもミッキーを演じた京マチ子のいけいけっぷりには笑ってしまった。「八頭身や」って。そうそうラストであの奇妙な音楽がマッチするシーンがありましたよ。 【カリプソ】さん [DVD(邦画)] 7点(2007-06-21 21:41:12) (良:1票) |
2.溝口健二監督の遺作!売春防止が成立される直前の赤線の女達の戦い、人間ドラマとして描いたこの作品、女性達の美しさ、流石は溝口健二監督らしく美しく描く。しかし、作品の出来としては、それまでの溝口作品の代表的な傑作と比べてしまうと、どうしても見劣りしてしまいます。どの女優にしても、本当に美しく撮られているのには感心させられるし、中でも若尾文子の可愛さは圧倒的です。これだけ可愛い若尾文子を当時、この作品の助監督でもあり、後に若尾文子とのコンビで多くの作品を手がけることになる増村保造が近くで観てれば、それは間違いなく若尾文子に惚れるのも解る気がする。 【青観】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2006-09-02 16:42:21) |
1.売春防止法成立以前の吉原に生きる女たちのドラマ。騙し騙され、泣きながら叫びながらも強かに生きていく娼婦、女の数だけそれぞれの事情があり、生きていく上で仕方なく身を堕とす女たち。そして新たな少女がこの世界の中に堕ちて行こうとしている。やがて少女は一人前の娼婦へと変身していくんだろう。 【亜流派 十五郎】さん 7点(2005-03-19 22:28:05) |