1.歴史、宗教、スペクタクル、とくると、大作映画の王道3点セット、という感じがいたしますが、それにしても1958年製作のこの映画。例えばウィリアム・ワイラー版の『ベン・ハー』が翌59年の映画であることを思うと、なかなか攻めてるなあ、と。
いかにも、海外映画がイエス・キリストだったら、日本映画は日蓮で勝負、といった感じで、弾圧に屈することなく法華経の教えを説く日蓮上人の姿が描かれます。大地震のシーンでは地割れが起こり家屋が倒壊し、日本映画だって負けてませんよ、という意気込みが伝わってきます。
タイトルにあるように、目玉は蒙古大襲来、と言いたいところですが、待てど暮らせど元は襲来してこない。映画がかなり終わりに近づいたところでようやく元寇となるも、時間の関係で、文永の役と弘安の役がまとめられた感じ。戦いの流れなどはあまり描かれず、もっと日本側の苦戦を描きこんだ方が盛り上がるんじゃないの、と個人的には思っちゃいますが(防塁などもすでに築かれている模様)、到来する大船団、巻き起こる混乱、大規模な合戦シーンを矢継ぎ早に叩き込み、そして暴風雨のクライマックスへ。ミニチュアを駆使した迫力の映像が、圧巻です。
なお実際は、文永の役の頃は台風の到来シーズンには当たっておらず、弘安の役の時は台風が到来したのであろうけれど、壊滅的な被害という訳でもなさそう(その後も戦闘は続いた)ですが・・・。
それはともかく本当は、前半をもっと削っていいから(宗教者の親子の情を描くというのも、ちょっとどうかと思うけど、日本的と言えば日本的か)、元寇をたっぷり描いて欲しかった、とは言え、こんなスペクタクル映画向きの題材がその後もあまり描かれてこなかったことを思うと、貴重、であり、感謝。
あ、元寇以外がつまらないと言ってるんじゃないですよ。そこまでの約2時間も、日蓮の苦難また苦難の連続で、物語を引っ張っていきます。だんだん、なんでこの人こんなにイヤがられてるんだろう、と思えてくるのですが、空気読めない感たっぷりの表情で日蓮を熱演する長谷川一夫。空気が読めないんじゃないです、信念なんです。
時宗を演じるは、市川雷蔵。何となく、ピッタリな気がします。この空気読めない感(笑)。
いざ元寇となると、日蓮の存在感が薄くなり、そのまま唐突に映画が終わってしまう印象で、企画的にはやっぱり多少、無理があったような気もしますが、日本映画のパワーを感じ取ることのできる作品、だと思います。