5.「吸血鬼VS狼男」という構図も、圧倒的に美しく強い女ヒーローという要素も、もはや「ベタだ」と言えてしまうほど、ありふれたアクション映画の“ジャンル”である。
しかし、この映画のシリーズには、他を寄せつけない唯一無二のポイントがある。
それは、「闇の美しさ」である。
タイトルが示すとおり、この映画はほぼ全編通して“闇”の中で繰り広げられる。主人公が吸血鬼なのだから仕方がない。
闇を描き連ねるあまり、ただただ画面が“真っ暗”になってしまっている駄作は多々ある。
しかし、今作は、見事に闇の世界の美しさを革新的なほどの映像美で映し出す。
藤子・F・不二雄の短編漫画で、吸血鬼に支配された世界における暗闇の美しさと素晴らしさを描いた作品があるのだが、まさにそれを思い出した。
吸血鬼から見た闇の世界は、これほどまでに美しさに溢れているのか、と思わせる。
そして、その美しい闇の中に、前作から引き続きケイト・ベッキンセールのまさに透き通るような美しさが映える。(実はもうそれだけで、及第点)
ただ、往々にしてよくあることだが、前作の大ヒットによって、製作費が潤沢になり過ぎ映画全体がやや「大味」になってしまっていることは否めない。ストーリー自体も、前作ほどスマートではない。
しかしまあ、ヴァンパイアたちによる悪趣味なほどに美しい、文字通り“血で血を洗う”戦いには、充分に見応えがある。