42.《ネタバレ》 原作をなぞるのではなく、映画のために再構成したのは評価できる。それでも余分な部分があり、必要以上に複雑な印象が残る。例えば、大佐のクーデター、新興宗教、根津などは不要だろう。逆に、最高幹部会、反政府革命分子等の説明不足。つまり世界観をより充実させ、鉄男と覚醒者、金田とケイに話を集中すべきだった。◆物語の核となるのは、人間の秘めた力と進化。人間内部には、アメーバーから人間へと進化させた未知の力が働いており、核兵器にも匹敵する爆発的なエネルギーを宿しているという。だが肝心なその部分の掘り下げが浅く、説明不足は否めない。ハードSFとしては成立せず、単なる超能力同志の喧嘩で終わっている印象。科学の暴走はありがちなテーマだが、この部分でも踏み込みが足りない。科学の暴走を徹底的に批判する人物をだし、対比させればよかった。
◆鉄男が覚醒してゆく様子や抑圧された精神と苦悩は丁寧に描かれており、評価できる。欲望のままに新能力を使うとろくなことにならないということ。
◆最大の問題点は、血と内臓の露出過多、つまりグロ。意味なく人が死ぬ事。つまり残虐描写が多く、観客を選んでしまう。興行成績不振の理由はここ。バイク疾走シーンの滑らかな動きは秀逸で、細部にわたる描きこみがあるのに残念。
【疑問点】
①第三次世界大戦と新型核爆弾とアキラの関係が不明確。
②標本のアキラなら何故あんなに恐れる?アキラの覚醒とその後の挿話がない。生きたアキラが登場しないのは最大の失望点。結局アキラは再生して再覚醒し大エネルギーを発するのだから、眠っているアキラでよかったはず。ここでもグロの悪い方へ向かってしまった。
③金田は孤児で貧乏な学生なのに何故あんな最新鋭の特殊バイクを持っている?
④冒頭、金田が店を出るときCDをかけるが、聞かないのに何故?
⑤暴走族が手榴弾?やりすぎでしょ。
⑥老人少年は何故成長がとまり、顔の老化が速いのか?声は子供だが、実年齢は40歳くらいのはず。
⑦老人少年が逃げ出した理由は?空を飛べる能力を何故使わない。反政府勢力が彼を連れ出した意図も不明確。
⑧ヒロインに魅力なし。不美人で、声はおばさんで、人殺し。恋愛ものとしては失格。
⑨3人の覚醒者は自らを犠牲にしてまで金田がアキラに取り込まれるのを助けたのか?「だってあの人は関係ないもの」と説明しているが、カオリなど他の犠牲者との違いは何だったのか。