2.《ネタバレ》 桜田門外の変から226事件までの日本の暗殺テロ事件の歴史をオムニバス形式で描いた東映のオールスター大作。描かれる9つの事件はそれぞれを題材に個別に映画化していてもじゅうぶんに見ごたえがありそうなボリュームを感じるのだが、それをオールスターのオムニバスでやってしまったところがいかにも東映らしい企画で、東映だからこそできた映画だろう。最初の20数分間にダイジェスト的にひたすら暗殺シーンを描いているが、普通なら単調になってしまうような構成でも勢いがあり、それをほとんど感じさせないのがいい。その中で印象に残るのはやはり高橋長英主演のギロチン社事件のエピソードで、冒頭の土手で友達に自らの思考を話すシーンや、最後のシーン、死刑台に向かうときの独白がどこかこの主人公 古田大次郎の切なさが感じられて良かった。そして本作のメインエピソードである千葉真一主演の血盟団事件。このエピソードだけはたっぷりと時間を割いて描かれており、単なる見世物的でなく、主人公 小沼正の生き様を描いた人間ドラマとしても見ごたえのあるエピソードだ。小沼を演じる千葉真一は「仁義なき戦い 広島死闘篇」の大友役で、狂犬のようなキレた演技が印象に残っているが、それから4年前の作品である本作ではそれとは逆の繊細さもある青年役を演じていて新鮮だし、この小沼も大友と同じくハマリ役だと思う。「広島死闘篇」で北大路欣也が演じた山中を最初は千葉真一が演じることになっていたというのも本作の小沼を演じる千葉真一を見ればよく分かるし、もし演じていたらどんな山中になっていただろうとつい思ってしまった。その小沼の同志である藤井を演じる田宮二郎はこれが大映を解雇されたあとの初出演映画だそうだが、やはり存在感があり、熱演を見せていて素晴らしく、その熱演に本人のやっと映画に帰ってこれたといううれしさも垣間見えた。それからお竜さんとはまったく違う印象を残す藤純子も良かった。最後の226事件のエピソードが途中まで白黒というのもドキュメンタリーチックで効果的だった。主人公を演じる鶴田浩二が年齢的にちょっと無理のある青年将校の役だが、きっちりとハマっていて、存在感があり、ヤクザ映画でのカッコ良さとは別のカッコ良さがある。そして、死刑を待つだけの仲間たちが入った牢を横切るときの演技がなんともいえず、その鶴田浩二に一人ずつ声をかける仲間たちにも切なさを感じずにはいれない。このシーンはまさに名シーンだろう。全体的に見るとちょっとオムニバスとしては不満があるのも事実なのだが、骨太な力作で、見終わったあとはじゅうぶん満足できる映画だったと思う。