3.《ネタバレ》 まったく事前情報なしで見始めて、苦手なファンタジーだったので、ちょっと後悔。ただ、30分過ぎた頃からぐっと入り込めて、最終的には記憶に残る映画になった。それは、この映画がもちろんラブファンタジーでありながら、一方で、仕事よりも愛を選んだ男のリアルなストーリーにもなっているからだと思った。
主人公は映画作りに情熱を燃やしていて、監督になるチャンスを掴みながらも、それを姫との愛のために、明確に捨てるのだった。実際、主人公が書いていた脚本は日の目を見ず、自身が監督になることもないまま、映画は斜陽産業となり、撮影所は潰れ、そして引き継いだロマンス劇場もなくなる。主人公が愛と引き換えに失ったものは、とても大きかった。
ただ、この映画の素晴らしいところは、そんな主人公の人生が、最後に報われるところを描いているところだ。一つはもちろん姫との愛によってなんだけど、もう一つはささやかだけど秘密に満ちた主人公の人生が、病院の看護師によって聞かれ、読まれることになる点にある。現代に向かって、映画の脚本という形でストーリーが進み、最後につながる、そういうこの映画の構造は、単に一本のストーリーで描くよりも、主人公の人生の意味を際立たせており、秀逸だと感じた。
そう考えると、映画の中戻ったラストシーンは、本当に必要なのか?、自分にとってはよくわからなかった。せっかく途中からリアルな男の人生に寄り添って見たのに、最後ファンタジーの世界に引き戻されてしまったからだ。もしかしたら本当は、主人公に過剰に肩入れなどせずに、気楽にファンタジーとして楽しんでもらいたい映画なのかな、とさえ思えて、ちょっとだけ残念だった。
とはいえ、坂口健太郎の好演もあって、男性にも薦められる珍しいラブファンタジー映画だと思った。