1.原作未読。当たり前だけどSFの映像化は難しくて、僕らの科学の常識では理解できないものを描くわけだから、たとえばこれがハリウッド映画だったらものすごいお金をかけてそれでもなんだかありえそうだと感じさせるようなものを作るんだろうけど、日本映画ではそんなことできるわけはない。だからこそこの映画ではSF的な要素にフォーカスせず、人間ドラマを中心に据えていて、その判断は(それでもSF原作の映画を作る意味があるのかという議論は別にして)すごくよかったと思った。いちいち「ちゃちいな」などと思うことなく、ストーリーに集中することができた。
そしてだからこそ、そんななかで主要人物(?)としてPETEを登場させたことと、PETEを演じた藤木直人の演技が素晴らしいと思った。俗物系やら人情系やら、暑苦しい人物が多数登場する人間ドラマの中で、PETEの存在だけがあきらかに異色ではあるのだが、コメディ要素を含ませつつその存在が浮き上がらないようにした監督のセンスと、それを演じきった藤木のセンスは秀逸だった。もしPETEが出てこなかったら、この映画の価値はもっと低くなっていたと思う。