1.《ネタバレ》 ユニークな配役で話題になっていたさかなクンの伝記の映画化だが、なかなか映画化するのが難しそうだと思っていた。
ミー坊(さかなクン)の子供時代は子役たちはかわいくてよいのだが何とかなく入り込めず、これは?と思ったが、
高校時代から面白くなってくる。共に「普通」からは外れている不良とオタクに親和感が生じるさまは違和感もなく面白かった。総長もカミソリ籾もいい人っぽい感じ全開だし、スクーターや自転車で行動してるのもマヌケでイイ。
しかし学生時代は楽しくやっていても、社会に出、好きなことだけでやっていこうとすると上手くは行かない。人生において好きなものを趣味で楽しむのはよいが、それを仕事にするには大きな困難が伴うのはさかなクンだけの話ではない。幼馴染のヒヨは「正統な」努力をして道を切り開いていくがミー坊にはそういうことは出来ない。その辺りのくだりや子連れモモと同居~別離の辺りの切なさはとてもよく、この辺りから最後の方までは観ていてずっと涙が出ていました。
モモの連れ子へのプレゼントに安いクレヨンか高価なクレパスか迷うのはミー坊が一時「好き」を手放しかける揺れる心の象徴だろうか(一般の多くは家庭を持つと好き勝手はしにくくなる)。「好き」と「楽」どちらを選ぶか、「飼われているみたい」とミー坊に看破された誰かの2号時代のモモ、ミー坊のアパート隣で日がなタバコすったりしているだけの「髪結いの亭主」(?)は、共にミー坊とは反対の究極の「楽」を選んだ人だろうか。
単純にちょっと変わった人の成功談にしておらず、映画オリジナルエピソードを入れ込みつつ人との触れあいや援助、人に伝えていくことの大切さ、そしてそういったことが世代を超えて繰り返される様ふくめ、人間の営みの普遍的なテーマが盛り込まれているのはなかなかなものと感じた。
説明的なセリフや描写、モノローグ等はあまりないので、両親が離婚or別居したような重要なことも映像から想像するしかない。
なんとなく歩いているだけなのに哀感が漂う感じ、楽しげにふるまう時との触れ幅の広さは流石にのん。