1.《ネタバレ》 新潟万代シティの立ち食い蕎麦屋に評判のカレーライスがあります。芸能人のファンも多く、ご当地B級グルメとしてテレビ等でも度々取り上げられ今や全国区の知名度となった通称『バスセンターのカレー』。昔懐かしの黄色いカレーで、とんこつスープが隠し味となっており昼時には行列が出来るという、おっと映画の感想から大分逸れてしまい失礼しました。私が言いたいのは、このバスセンターのカレーにはレトルト商品があるという点です。一箱1.5人前で590円也。最近少し値上がりしたのかな。このレトルトも美味しいのですが、本物と比べると大体60〜70%くらいの美味しさなのです。で、何が言いたいのかというと、本作も本物と比べると大体同じくらいの面白さということ。ここで言う本物とは元ネタのアニメ『おそ松さん』ではなく、脚本を担当された土屋亮一さんが代表を務める演劇『シベリア少女鉄道』の公演と比べてという意味であります。シベリア少女鉄道、シベ超ならぬシベ少。計算し尽くされた緻密な脚本で展開されるパロディや時事ネタ、悪ふざけを旨とする混沌と狂気の舞台。初めて観劇した2017の作品『残雪の轍/キャンディポップベリージャム!』で衝撃を受けて以来虜となり、何度も劇場へ足を運んでいます。何時も思うのは、舞台ならではの発想と表現だなということ。限られた空間と演劇暗黙のルールを逆手に取り、かつ観客の想像力をフル活用した茶番劇。もとい、知的で高度なエンタメであります。本作の脚本はシベ少舞台にフィットする仕様であり、映画向きではない気がしました。何が不都合か?舞台では想像力で補完する部分が映画であるが故に映像化されており、想像する楽しさが奪われていたような。模範解答が自分なりの正解を上回るのは困難です。やるなら圧倒的な映像力で、個々人の想像力を捻じ伏せるくらいでないと。本作の表現では物足りないと感じます。これが「60〜70%の面白さ」の真意です。このスタイルのコメディが映画技法のひとつとして浸透していないハンデもあるでしょう。ただし、元が120点なので60%でも72点。及第点超えです。生モノの舞台公演と違い、何時でも好きな時に観られる映画はファンにとっては有難い話。そういう意味でもレトルトカレーみたいな作品だと思いました。もしこのクレイジーな世界を気に入った方がおられましたら、シベ少の舞台を体験してみて下さい。口を付くのは「一体何をみせられているんだ?」極上の困惑を味わうことが出来るはずです。ちなみに私立恵比寿中学主演の舞台も円盤化されておりオススメです。今なら『エクストラショットノンホイップキャラメルプディングマキアート』が某サブスクで観られますよ。なお今回は、アニメの実写化作品として、あるいはアイドル映画としての評価視点は放棄しておりますので何卒ご了承下さい。