7.《ネタバレ》 金子正次を初めて観た。
33歳という若さで亡くなった俳優で、どこか原田泰造に似ていなくもない。
作品としては、別につまらなくはない。
指を詰めるシーンが出てきて、「春山病院に行って、竜二の舎弟って言えばやってくれるよ」とか、春山病院に知り合いが居る私としては妙にリアルな話だったりするし、職安通りにある“フランスベッド”の気色の悪い看板が出てきた時には、ほんと大久保の息吹を感じた。
だけど、大久保と歌舞伎町ロケの良さを感じたのはそれくらい。
もう少しロケが欲しかった。
ヤクザがヤクザに飽きてカタギになり、平和な家庭を営むが、やっぱり性に合わずヤクザの世界へ出戻る。
まあ、適材適所、人間最後は納まるとこに納まるといった話なんだけど、ラストシーンで、商店街の大売出しの列に並ぶ奥さんと無言のまま別れ、去っていくという演出なんかは素晴らしい出来栄え。
でも、何ていうのかなぁ・・・どうも個人的には居心地が悪い映画だった。
ヤクザから足を洗ってカタギになったなら、トラブルや倦怠期を根性でクリアして欲しかった。
やっぱり自分も若い頃はフラフラしていて、今は社会的に落ち着いているんだけど、どうもこの映画を観ていると、そんな自分の安定生活がいつかは破綻するような気がして、不安な気分にさせられた。
人生には一大転機というのがあって、そこで異なる環境に果敢にチャレンジするケースってあると思うのだが、この映画は、そんな人間の非人間讃歌になってしまっている気がする。
ヤクザな世界が合うのなら、ヤクザの世界に戻ってしまうのは仕方ないことではあるけれど、一方で、一度カタギになって家族を養い、地道に生きていくことを大の男が決心したのなら、もう少し踏ん張って頂きたかった。
懸命に働き、仕事後のビール一杯に安堵するあの気持ちよさ、あの新鮮さを忘れないでいて欲しかった。