10.映画として面白いかと問われれば、それほど面白くはないと答えるだろう。
さすがにロッキーのような面白さはないだろう、現実のボクサーのありのまま姿を追い求めたものだから。
ただ、映画の質は高かったと思う。
つまらないと言っている人、同様楽しめない理由としては、アリのことをよくは分かっていないので、その辺の背景や宗教、徴兵制を含めたボクサーアリの知識を知っている人は楽しめたと思う。
そして2時間30分は観る者には長いようでも、アリの人生を語るには短すぎた。
本来なら10時間位かけてやるべき内容をこの短い時間に詰め込みすぎた感は否定できない。
それでも「民衆の王者」として人から愛され、自らは人が望む姿を追わずに自分の生き様を貫いた男としての生き方には感銘を受けた。
徴兵訴訟中の戦いたくても戦えない苛立ちやもどかしさのようなものも充分伝わってきた。
自信満々に語っているのは、他人を言い聞かせるのと同時に自分にも言い聞かせているような感じも受けた。
ジェイミーフォックスやジョンボイトの脇役も光り、アリとの関係もなかなか良かったと思われるがもう少し掘り下げても良い感じがする、特にフォックスとの関係は。
女性関係の甘さなどは描かれてはいたが、人間らしい弱さも少し加味できれば人間としてアリがもう少し近くに感じられたかもしれない。