9.小津の異色作。
話し自体はいつものあれで家族物です。
また演出も正面からのカット、斜めから2人で座って会話するカット、立ち上がるタイミングも一緒、
繋ぎの風景のカットなど、まるで小津調のパロディのような映画です。
そういう意味では小津らしい映画ですが、変なのはラスト10分。
全員が立ち上がって火葬場の煙突から出てくる煙を見るシーンから、
急に音楽が不気味になり、登場人物たちの顔を明らかにシリアス、深刻な顔になり急激に映画のトーンが変わる。
面食らうほどの唐突な変貌ぶりである。
葬式なので皆黒い喪服を着ているが、そこに黒いカラスを差し込んでわざわざ見せている。
いつもは主役の笠智衆は超端役で川で洗い物をしている。
何かいつもの小津映画と違う。わざと違う風をアピールしているようにも思う。
小津映画の中ではあまり評価の高い映画ではないかもしれないが、異色作と定評の東京暮色とは別の意味で異色作だと思う。
蛇足ですがヒロイン役の司葉子は、痩せすぎで演技も陰影が無く、年を取って娘役が出来なくなった原節子の代わりとなるには魅力がなくて残念。