4.《ネタバレ》 山崎豊子原作、山本薩夫監督コンビ作品として、『不毛地帯』に続き鑑賞。
『不毛地帯』とはまた違った意味で、見応えのある内容だった。
佐分利信の独壇場的様相を呈してはいるが、仲代達矢も相変わらずの熱演。
香川京子と中村伸郎と志村喬などは、異常なほどにチョイ役でびっくり。
京マチ子は、二重アゴでこれまた異常なほどに気色が悪い。
酒井和歌子の美しさを発見し、目黒祐樹のニヒルさにも驚いた。
田宮二郎のリアル猟銃自殺を誘引したかのような自殺シーンにゾっとする。
こうした登場人物たちのインパクトも見所の一つだが、やはり山崎豊子の情報収集力に裏打ちされたリアルで重厚なストーリーが、なんと言っても最大の魅力だろう。
結局、言いたいことはシンプルで、日本の資本主義社会の構造は、政官癒着、資本家が労働者を搾取し、結果として、一番の犠牲者は末端の労働者であること。
そして、官僚が権力を欲しいままにし、大企業の資本家すら利用される。
つまりは、弱肉強食の世界。
そして、権力闘争に肉親も恋人もないということ。
佐分利信が、仲代達矢を実の子と知った後でも、その死に対して「企業家である限り、企業存続の危機に直面したら、肉親も何もない」という言葉をはくシーン。
これは実にショッキング。
老いてなお権力に執着することの怖さ。
企業家であろうとも、それ以前に人間なわけで、企業存続のためなら息子も犠牲になるのは仕方ないという論理は到底間違ってはいるが、3時間半も濃厚に財界の内幕を見せられると、そう考えてしまう可能性も十分あり得ると感じてしまったから恐ろしい。
現代日本経済は、不景気から脱出できず低迷が続いているが、その反面、こうした「仕事が全て」といった考え方そのものが薄れてきているのも事実。
そういう意味では、現代の不況極まる日本も、いい面はあるんだと思いこみたい。