24.《ネタバレ》 “オフ・ビートの貴公子”ジム・ジャームッシュ作品の中でも、ジョン・ルーリーやトム・ウェイツが常連だった初期が自分は大好きです。その中でも本作はオフ・ビート感では最高で、短いシークエンスを繋ぐ暗転の多いことと言ったら、いくら5秒ぐらいでもこれだけあると上映時間の3%ぐらいにはなるんじゃないかな。全編モノクロで撮影されていることから来る印象だけでなく、とてもアメリカが舞台とは思えない風景ばかりが映されるところも狙っていますね。NYはともかくとしてもクリーブランドやフロリダにしてもとてもご当地とは思えない風景、「これがエリー湖だよ」とエヴァが案内するシーンがありますが、ただの白い雪原を見せているだけの感じで、「ほんとにエリー湖なの?」と疑いたくもなります。低予算だし、実はNY周辺の“なんちゃってロケ”で済ましてたりね(笑)。三人の登場キャラの会話は少ないまでは言わないにしても一文が極端に短く、この映画でいちばんしゃべってたのは、ハンガリー語しか話さないクリーブランドのおばさんでしょ(笑)。いちおうこの映画は三部構成、“序・破・急”というか三題噺みたいになっていて、とくにラストはまるで落語のオチですよ。だいたいフロリダの田舎空港からブダペストに直行する航空便なんてあるわけないじゃん(笑)。 とくに何も起こらないけど尺も丁度良い感じで不思議と退屈せずに引き込まれてしまいます。ロード・ムーヴィーならぬ“ロード散文詩”という感じでしょうか。 【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2021-01-15 23:27:20) (良:1票) |
23.《ネタバレ》 これ「鬱陶しいのはごめんだよ」という若者たちの物語ね。親戚づきあいは鬱陶しい。「横丁の向こうまで行っちゃいけないよ」と忠告されるのも鬱陶しい。一人、大いに結構、という若者たち。でもエヴァに覚えてもらってると、エディは喜ぶわけ。第一、わざわざ一年たってからクリーブランドまで行くんだもん。内に閉じながら、ビクビクと触角を伸ばしている感じに、現代っ子を見ている。ロッテおばさんがいい。ドシーンと椅子に座っているとこ。ハンガリー語だけで押し通して暮らしてきた重み。湖を見に行くシーンがおかしい。何かハンガリー語で非難を続けるロッテおばさんを残してフロリダへ。不意に大金が転がり込んでくるところも実におかしい。黒味があることで、ワンカットワンカットを三人がそれぞれの場所で回想しているような感じになって、奇妙な叙情が出てくる。何かまたすぐに会えるんじゃないか、この連中、って気がするのは、その回想的であることと関係があるんだろう。 【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 8点(2010-12-12 09:28:46) (良:1票) |
22.ジャームッシュの映画は言葉が上手く通じないもの同士が集まる話しが多い。その為生じるすれ違いやら勘違いやらがまた可笑しいのだが結局根っこでは通じてるんだよね。彼の映画には言葉じゃなくて目線や仕草や風景を見て、或いはその独特のリズムを感じて、その場の空気を体感し想像する楽しみがあるのだ。 【黒猫クロマティ】さん 8点(2003-12-17 12:06:12) (良:1票) |
【ポジティブ】さん 8点(2003-11-03 19:08:28) (笑:1票) |
《改行表示》20.《ネタバレ》 音楽に耳を傾けることから全てを受け取って欲しい、ということらしく、その昔買ったクロノス・クァルテットのアルバム「冬は厳しく(WINTER WAS HARD)」にはライナーノーツが無く(日本のレコード会社は何が何でもクラシック音楽のCDにはライナーノーツを付けたがるにも関わらず)、とは言っても著名な作曲家の曲が多いので(かつ、かなり有名な曲もいくつかあるので)、得体の知れないアルバムなどということは無いのですが、そんな中、6曲目のBELLA BY BARLIGHTという曲を書いたジョン・ルーリーって人は、一体誰なんだろう。 と、当初は誰だか分らなかったのですが、それが実は、この映画の主演のヒト。そして、映画冒頭に流れるのがその、BELLA BY BARLIGHT。 得体が知れないと言えば、こんなに得体の知れない映画も無くって、映像を見る限り、いつの時代のどこの国の映画だか、まったく不明。50年代のヨーロッパとかならまだしも、まかり間違っても80年代のアメリカには、到底見えない。。。 という無国籍な雰囲気。アメリカも切り出し方によっては、こう見える、ってことなんですかね。安く撮れば風景も安く見える、という訳でもないのでしょうが、ザラついたモノクロ映像に映し出されるアメリカは、独特の雰囲気。エヴァが両手にカバンを提げて歩く姿を移動カメラが追いかけていくシーン、その背景に映るのもまた、アメリカの町なんだなあ、と、かえって斬新に見えます。クリーヴランドの街も、雪と氷に包まれたエリー湖の景色として描かれたりして。 ストーリーは、あって無いような、というより、「無い」と言っちゃった方がスッキリするかもしれません。もちろん見る側も、この見るからにストーリーの無さそうな映画に対してそちら方面の期待は持たないので、雰囲気と、ちょっとした出来事や事件を、楽しむ。 私は映画を撮ったことも無いし撮れるとも思わないけれど、これから映画を撮ろうという人の気持ちを想像すれば、おそらく、演出の真似事の第一歩として試しにやってみたいこととしては、カット繋ぎ、ということになるんじゃないか、と思ったりもするのですが、この作品ではそんな事には関心が無いのか、それともおカネが無さ過ぎてそんな余裕も無かったのか。ワンカットごとに暗転して映像は途切れ、ここまでそれが徹底されると苦笑してしまいますが、暗転中も音が映画を繋いでいたりして、意外に違和感が無い(というか、無くなる)のがまた、面白いところ。 それにしても、主人公3人が小金を手にして、結局はバラバラになってしまう、というラスト。商業映画第1作にしてすでに、ビンボーをこじらせているような。 【鱗歌】さん [インターネット(字幕)] 8点(2024-05-01 15:04:43) |
《改行表示》19.《ネタバレ》 極めて少人数の編成、かつ基本的に普通の室内・車内ばかりで展開される会話劇で(数少ない屋外のシーンも人気の無いそこら辺が殆ど、という)、見るからに低予算である。その会話にしても、内容的にも文字数的にもこれもホントに何の変哲・含蓄も無いというか、何とも省エネな映画だと思う。 しかし、そんな中に慎み深くも表出される登場人物の感情の錯綜が率直に非常に面白い。出色は何と言ってもエヴァで、自分が「可愛い」ことを骨の髄まで知り尽くしているが為、自分が男に対しては絶対的に優位に立てることを完全に理解している、という謂わば「猫」。やはり本作、まずドレスの件が実に味わい深く感じられるし、あと面白かったのが4人が居並んだ映画館のシーン。「その並びなの?」しかしエディとウィリーは明らかにそのつもりなので、これは必然なのである。誰もなにも喋らないが、その頭上に垣間見える火花が出るほどの感情の錯綜がこれも面白い(エヴァは多分なんも考えてないだろうけど)。終盤はテンポが上がってかなりドタバタしているが、ここも笑えた(「予感」の話とかもとても好み)。 様々な無駄を削ぎ落すことで旨味だけを際立たせた様な、真に監督の力量が知れる映画だと思う。一級品の上質なコメディ。 【Yuki2Invy】さん [DVD(字幕)] 8点(2020-06-08 00:43:10) |
《改行表示》18.ジャームッシュ初期の作品ですが、変わることの無い彼らしいテンポと空気がある作品です。 1つ1つの台詞が短い。そして微妙な沈黙という間が繰り返される。 行間と隙間だらけの作品ですが、その行間を読み取らなければならないという小難しさも無い。 その微妙な間、行間に漂う空気に独特の可笑しさがあるジャームッシュ流コメディ。 例えば、ウィリーがエヴァにジョークを披露する。そのジョーク自体は別に面白くも無い、短いシーン。 しかし、ジョークを披露するウィリーとそれを聞くエヴァ、そこに流れる微妙な空気の可笑しさがいい。 些細なきっかけで3人がそれぞれの思いとは裏腹にバラバラになってしまう、あっけないラストも印象的。 同じく3人組がそれぞれの意思をもって別れ行く次作「ダウン・バイ・ロー」とはまた異なる余韻を残します。 【とらや】さん [DVD(字幕)] 8点(2020-04-26 13:53:54) |
17.なんなんだ?この分かりにくさ。訳が分からん。分からないときは他の人の感想を読んだら、誰か一人はうまく説明してくれてるんだけど、それもない。それなのになんか面白い。なんかいいんだよね。おもしろい!観終わるとうれしくなってくる。だれかが、書いてたけど、やっぱりあの彼女のたんたんとした、それでいて優しい、しっかりした魅力。これが中心にある。そして最後の結末や、全体を通じての二人の男の可愛いバカさ加減。人生って皮肉なものだねってことか。観てよかった。 【柚】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2014-10-03 18:56:22) |
16.予備知識ゼロで見たのですが、喜劇だったんですね。ラストの飛行機が勢いよく飛び立つシーンは、今でも思い出すだけで笑えます。それに最後まで引き込まれたのは、ひとえにヒロインが魅力的だったから。単に美人なだけじゃなく、寡黙ながらも芯が強そうで、サバサバしていて少し薄幸そう。旅立った彼女がどうなったかを見届けたい(もしくは見守りたい)と思うのは、おそらく主役の彼だけではないでしょう。というわけで、おおいに楽しめました。 【眉山】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2012-12-27 22:25:48) |
《改行表示》15.いいなあ。ジャームッシュ。 いいなあ。エスター・バリント。 一見退屈そうに見える映画ですが、あっという間に終わってしまいました。 とにかくこのいつまでも味わっていたい絶妙な「間」が生み出すテンポと空気感に魅かれます。 【せかいのこども】さん [DVD(字幕)] 8点(2011-01-16 13:30:55) |
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《改行表示》14.私がアメリカ映画に持っていた偏見ですが「いつも明るく元気で爽やか」というイメージを良い意味で覆してくれた映画です。ウィリー、エヴァ、エディ、3人のいつもどんよりと冴えない若者たちをお洒落なセンスで描きながら、3人が交わすユーモラスな会話とその絶妙な間が楽しめました。エヴァが聴いていたS・J・ホ―キンスのR&Bの感触は、周囲に媚びないエヴァの無愛想な表情と共に鑑賞後も忘れることができません。 【まっしぃな】さん [映画館(字幕)] 8点(2010-01-09 10:46:19) |
13.《ネタバレ》 ジム・ジャームシュ監督、この監督は空気を読む。それは人間的温かさ、何てことのないやりとり、会話の中に何気ない人間的魅力というものを描くことが上手い。切り返しのない固定されたカメラワーク、まるでスケッチのような風景、絵画とでも言うべきこの映像美、モノクロの美しい映像、会話と会話の間に途切れるあの黒い画面構成の瞬間の彼ら(彼女ら)の会話、やりとりを想像する楽しさというものがこの映画にはある。この映画のあの三人、ちょっとした下らないことで喧嘩もするし、お金があれば直ぐ競馬につぎ込む。そんな彼らの姿を見ると人間の本質のようなものを感じずにはいられない。やってることは馬鹿かもしれないけど、そんな彼らが私は好きだ。画面全体を支配する何とも乾いた空気、殺風景な感じの中に見られる何気ないやりとり、会話、噛み合わないことで彼らは人間として何かを得ようとしているに違いない。噛み合わない会話、すれ違い、正しくそれこそ青春!この映画は紛れもなく青春映画である。血も涙も一切出ない青春の一頁!どこまでも馬鹿だけど、そんな馬鹿な男、二人を見守るエバの彼女の何とも無愛想だけど、優しき人間的魅力も心に残る。三人が揃って同じ映画を見ているシーンでのポップコーンの食べ方も同じサングラスをかけるシーン、私はこの映画の中でもこの二つのシーンが好きである。ラストの主人公がアメリカから弾き出される所の皮肉の利き方もこの映画の面白さの一つであり、人生なんて皮肉なものさとまるで監督自身が言っているようにも感じられずにはいられない。 【青観】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2008-10-22 21:06:18) |
《改行表示》12.どこにでもありそうなお話し。 その上、気詰まりな雰囲気、弾まない会話。 わざと?と思える、遠くからのショット。 それでいて、3人の気持ちがこんなに近く感じられるとは! こんな語り口で、私をぐいぐい引っ張っていくジャームッシュ監督は素晴らしい。 これぞ映画の醍醐味だと思う。 【たんぽぽ】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2008-02-11 22:25:23) |
11.この何とも人を食った終わり方が良い。「ここではないどこか」へ行っても、さえない日常は変わらない。モノクロームで描かれた若者たちのリアル。ジャームッシュはこれが一番! 【フライボーイ】さん [DVD(字幕)] 8点(2008-02-05 07:41:19) |
10.「ワンシーン/ワンカット」の画面構成が非常に印象的(最初は違和感を感じましたが…)。別段大きなドラマがあるわけでもなく、その日その日を何となく生きている3人の若者のグダグダな生活の断片を、文字通りブツ切りにして並べただけのような映画。このテの映画ってあまりグダグダすぎるとただ単につまらない映画で終わってしまうけど、この映画の場合はその辺のさじ加減が絶妙。どこがどうというわけでもなく絶妙。内容よりも雰囲気を楽しむ映画のように感じました。 【とかげ12号】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-06-09 16:22:24) |
《改行表示》9.非常にクールな感じで、心地よい時間が過ごせる映画ですね。メッセージや情感に溢れた作品も好きですが、こういうスタイリッシュな格好いい作品も良いですね。 ストーリーは結構まったり進むんですが、フェードアウトが多用されていて非常にリズム感のある仕上がりになっています。 まあ、たいていの映画だと観ている途中で展開がある程度見えてくるんですが、この作品は最後まで読めませんでしたね。正直、「一体どうまとめるんだこの話を」と思いながら観ていました・・・・・。 ラストについては、「上手い!」の一言です。 スクリーミン・ジェイ・ホーキンスの曲が凄くハマっていて格好良かったです。 【TM】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2006-12-18 17:04:30) |
8.《ネタバレ》 『ダウン・バイ・ロー』にそれほど入ってゆけなかったのはコイツのせいかもしれない。それほどに衝撃的な映画だった。ジャームッシュ作品の中では『デッドマン』と共に大好きな映画。衝撃的といってもお話の展開に劇的なものは無い。登場人物たちの感情の高ぶりすら描かれない。にもかかわらずとてつもなくドラマチックに感じさせてしまうこの映画はやっぱり衝撃的。普通、黒を際立たせて美しさを出すモノクロ画面も、この作品は白を眩いばかりに際立たせているのも衝撃的。現状に漠然と希望を見出せない3人の男女がいくら場所を変えても何も変わらない。だけど特に印象的な言葉を交わすこともなく、ただいっしょにいるだけなのに、だんだんとお互いを思いやってゆく関係になってゆく様は感動的。ラストですれ違わすことで徹底的にドラマチックな現象を起こさせない。それでもそのすれ違いによって優しさが露呈される。そのとき、ささやかな日常に大いに感動する。 【R&A】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2006-05-10 16:22:57) |
7.アメリカ人になろうとスタイルばかり気にして生きているウィリー、田舎から夢を抱き何かを求めにきたエヴァ。彼等にとってアメリカでの生活は夢のようなものでなく、日常にどちらかが入り込む非日常は疎ましくもあるが、日常からの脱却を夢みるお互いにとって何かを起こす勇気となる。現実はフロリダに行けば夢のような生活があるわけでもなくニューヨークの片隅と何も変わらない。それぞれの想いはただ空回りして終わっていくが、やがて彼等は何もない日常へ何もなかったかのように戻っていくのでしょう。この物語の中で最もアメリカ人らしく生きているのは、英語をしゃべらないくせに罵る際にサノ○○ッチ!と叫ぶ叔母ちゃんなのかな。学生の頃見た時は人前ではカッコつけて面白いと言い、部屋にもポスター張ってました。でも当時は全然面白くなかった!ウソついてました、ゴメン。 【亜流派 十五郎】さん [DVD(字幕)] 8点(2005-11-17 17:42:38) |
6.こういう映画は好きですねぇ。常に画面に無意味さというか、退屈さが出ていて、それは主人公たちがどこにいても、何をしてても変わらない。ラストも好きです。 |
5.のっけからスクリーミン・ジェイ・ホーキンスのシャウトにうっかり巻き込まれてしまった私も素直だが、この世界に入り込める人はけっこうハマると思う。独特のテンポで、どっちへ向かっているのかよくわからないユルい展開。日常を忘れて静かなムードに浸り、時々「ぷ。」と笑いたい方にはお勧めできる。あんまりストーリーとかメッセージ性とかをクヨクヨ考える作品ではないように思う。なんとなく、雰囲気に浸れれば良いのではないでしょうか。アメリカ映画とはちょっと思えないくらいヨーロッパの香りが漂いますね。ジョン・ルーリーのとぼけた表情が良いです。 【anemone】さん 8点(2003-12-20 14:10:04) |