9.《ネタバレ》 ファーストシーンが面白い。
ホテルで眠っていたある男。
起き上り、しばらくしてコップを投げ割る。
何かに苛立っているようだ。
そこから逃げるように外に出る男。後ろから男を追う二人の影・・・最初にこの男が「訳有り」という事を印象付ける見事な出だしだった。
そこから別の画面は家に移る。
その家こそ男が叔父として関係を持っていた家なのだ。
ヒロインは叔父に憧れを持った少女。
叔父も彼女に少し気があるようだが、叔父は何かを隠している様子だ。何処か影があるような・・・。
そして叔父を追う謎の男二人。
日常に潜む奇妙な光景や人間の狂気を描くヒッチコックだが、今回は登場人物の心理描写が徹底している。
羨望の眼差しが疑惑に変わる瞬間、叔父の狂気の影の一面を覗かせる瞬間、追手二人の真相を知る瞬間・・・階段が印象的だった。
シンプルでよく出来たストーリーだが、やはり何かもうひと押し欲しくなる。
ヒッチコックは既に「レベッカ」「海外特派員」「知りすぎていた男」を観てきたが、ラストの列車での“対決”に前者ほどのインパクトは感じられなかった。
それでもよくまとまった締めくくり。
普通によく出来た秀作。