16.《ネタバレ》 韓国映画『シークレット・サンシャイン』に匹敵する映画は現れないと思っていたが、すぐ目の前にあった。同じく喪失のテーマを扱いながらも、宗教を強調しないあたり見易い。監督の鬱病体験を元にしているだけあって、描かれている夫婦が身近に感じる。同時に周囲の他者に対する無知も無理解さも。法廷画家として携わる夫が見た重大事件の裁判の数々は、奪った者、奪われた者の負の感情が凝縮されている。全て人・人・人が生み出した側面に対して達観しているからこそ、長い時間をかけて妻を癒せたのかもしれない。物語は911直前で終わる。歴史も日常も先の見えない暗澹さはあれど、明けない夜はきっとない。そうやって世界はぐるりと廻っている。 |
《改行表示》15.こういう映画は好き。 最近良質な邦画が増えて気がする。 |
14.《ネタバレ》 ちょっと壊れちゃった夫婦の再生を描いた物語。いやぁいい映画を観たなぁって印象ですね。採りあげられるエピソードがいちいちシブイ!しかも撮りかたもウマイ!演技もウマイ!とくれば、ちょっと長めの作品で、わりと淡々とした内容ですが魅入っちゃいますよね。木村多江さんはいわずもがな倍賞美津子さん、柄本明さん、寺島進さん、みんないい!リリーさんはハマってましたね、この役。『見守りキャラときどきお下品』は彼の真骨頂と言えるでしょう。ただ、見守るモチベーションみたいなものが見えてくるともうちょっと良かったかな?あと法廷画家の設定がこの映画のテーマとどう沿うのかは正直見極められなかったのはわたしの理解力不足でしょう。。。 【ろにまさ】さん [DVD(邦画)] 8点(2012-02-27 22:40:26) |
13.法廷画家という主人公の職業を通して宮崎勤や宅間守、お受験殺人、オウム事件等の裁判を傍聴させるという描きかたが秀逸。同時に欝の妻と社会変動に振り回される妻の家族を描くことで、社会から逸脱し特異な犯罪を犯した犯人と、ごくありふれた日常の社会病理を平行して描き、いかに逸脱せずに生きられるか、現代社会の社会病理を鋭く突いた傑作の社会派作品となっている。特に裁判部分は有名事件の裁判の傍聴ものだけで一本作って欲しいほどの興味深さで、逸脱してしまった犯人の言動は時にコミカルですらある。それにしても木村多江、冒頭やたら明るい女性だったので木村多江が明るい役とか珍しいな!と思ったら案の定である。子供に戻ったかのように泣きじゃくる脅威の演技。ハリウッドにもあれほど汚い顔で綺麗な涙を流せる女優は居ないだろう。それにしても木村多江、化粧で整っているときより顔が崩れれば崩れるほど魅力が増していく謎な女だ 【Arufu】さん [DVD(邦画)] 8点(2011-06-17 14:59:54) |
12.ここぞというとこの長回しと、他愛もない描写に注がれる暖かい視線は素晴らしい。構図も一つ一つ工夫していていい画でした。ストーリー自体はハッシュに比べるとオリジナリティには欠けますが、似て(?)非なるものであったハッシュと違い、夫婦を正面から扱っているあたり、監督の成長というか意識の向くところからすると必然の題材選択だったのかもしれません。最初はだめだめに見えるリリーフランキーのダメさ加減が段々いい感じになっていきます。木村多江の堅さと溶け合っていくかのようでした。いい映画でした。 【Balrog】さん [DVD(邦画)] 8点(2010-11-17 23:36:30) |
11.淡々と約10年間、佐藤夫妻のぐるりのことを描いてて誰も思い当たることがある空虚さと幸せをうまく表現していたと思う。 【HRM36】さん [DVD(邦画)] 8点(2010-02-03 12:49:08) |
《改行表示》10.《ネタバレ》 正直に申し上げると、あまりリリー・フランキーが好きではなくて、何故かと言うとあの自然体に不自然な印象を持っていたからだ。飄々としているぜ、超然としているぜ、と言っていないのに言ってる気がして、そこから引きずりおろしたかったのである。でも、この作品のリリー・フランキーは、すごく良かった。まさに自然体だった。こういうタイプ以外の役ができるのかは分からないけれど、少なくともこの作品にはぴったりだった。 法廷画家のカナオと小さな出版社で働く翔子の結婚生活が、その時代の大事件と被せて編年体で語られるという地味な作品だが、人の心の動きを丁寧に追うという意味では、とても優れた作品になっている。いい加減なカナオと几帳面な翔子の生活は、最初はコミカルに描かれるのだが、娘の死を境に翔子はうつ状態に陥る。そこの部分の描写がちょっと弱い(実際のうつ病はもっと本人も周りも大変)かな?と言う印象は受けたが、許容範囲には収まっていると思う。その後、翔子が回復していく過程の描き方も温かくて気分が良かった。 あとは、翔子の兄夫婦を演じている寺島進と安藤玉恵の演技は特に良かった。倍賞美津子とか他の脇役も味のある演技でストーリーを盛り上げていた。 【枕流】さん [DVD(邦画)] 8点(2010-01-24 21:43:07) |
《改行表示》9.《ネタバレ》 面白かった。 生活が壊れてしまった人たちの、そこからの人生っていうのは他人との関係がこうも微妙になって行ってしまうんだろうか。現実の人間が壊れたらもっと悲惨なのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。 そんな人生の姿って言うのは、悲痛だったり冷静だったり、いい気味と思ったり、怒りだったり、いろんな感情を他人に与えるのかもしれない。冷笑を浮かべる人だっているかもしれない。そういう人生になってしまったらどういう風に生きていったら良いんだろう。 どうして良いか分からない。 そういう気持ちを心のどこかに抱える人ってどれだけ居るんだろう。どうして良いか分からない不安感や、行き詰まりをどういう風に解決したら良いんだろう。作中の夫婦には絶望感しか感じることが出来なかったが、次第に絵というよりどころを人生に組み込むことが出来るようになるその時は心が解けるようだった。よりどころとなる絵という業を持つ彼らには羨望さえ感じることができた。 何に向かわせればいいか分からない気持ちを、様々に巡らせたその後に残ったのは憂鬱でも爽快でもないが、何となく現実を上手に生きていきたいという気持ちに気づいた。 【黒猫クック】さん [DVD(邦画)] 8点(2010-01-03 22:10:29) |
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【アフロ】さん [DVD(邦画)] 8点(2009-11-17 15:51:16) (笑:1票) |
《改行表示》7.《ネタバレ》 嵐の夜。夫が帰ってくると妻は窓を開けたままで吹き込んでくる雨にずぶ濡れになっている。 「ちゃんとやらなきゃ、 もっとちゃんとやれると思ったのに どんどんだめになってっちゃって もうどうしたらいいかわかんない」 そんなふうにいって心を病んだ妻は泣きじゃくる。 その妻をまるで泣いているこどもをあやすようになぐさめる夫。 「おまえは頑張りすぎるからだめになるんだ。 ちゃんとしなくったっていいじゃないか」 夫が描く90年代世間を騒がせた数々の事件の法廷シーンも 妻の病んだ心を回復させる天井画も、この嵐の夜の号泣の前後を埋める背景にしか過ぎない気がする、少なくとも私にとっては。 それでも、結局のところ映画ってのはこんなふうに、たった一つでもいい、あるシーンが心に深く突き刺ささってくれればいいものなのかもしれない。 その痛みがほしくって私たちは今日も映画を観続けているものなのかも。 【ぞふぃ】さん [DVD(邦画)] 8点(2009-11-09 17:46:56) (良:1票) |
《改行表示》6.《ネタバレ》 橋口監督の繊細な人物描写は見事ですね(これまでの作品はテーマ的に敬遠していましたけど、今後の作品は見ていきたいと思いました)。木村多江とリリー・フランキーのキャスティングも見事にはまってました(理想的な夫婦関係ですよね・・・)。それと、90年代の不気味で世紀末な世相をうまく取り入れてたのも良かったです。 見終わった後、確実に心がやさしくなっている・・・そんな作品でした。 【TM】さん [DVD(邦画)] 8点(2009-07-03 18:31:28) |
《改行表示》5.タイトルからなんとなくほのぼのした作品をイメージしてたのだけど、見てるだけで鬱になりそうな暗い展開に凹みました。 血を吸い出すシーンもグロテスクで駄目でした。 本当に切ってるんだろうかとか、その後の洗浄シーンで大変なことになるんじゃないだろうかとか考えてしまって本編に集中できず、ちょっと鬱。 裁判もどんどんエスカレートしていく感じで、全部鬱。 途中で逃げ出そうかとも思ったけど、最後まで見ないとレビューする資格を得られないし、困った鬱。 それでも、後半は気持ちが開放されて鬱も解消。 心が軽くなって温かい気持ちで鑑賞を終えることができました。 いい作品です。 木村多江は脇役としてはいろんな作品で見てきましたけど、主演女優としても素敵でした。 リリーさんも良かったし、その他の人たちも実はいい人ばかりで、誰も悪人が居なかったような気がします。 もしかして、被告たちも実は悪人ではなかったとかいう裏メッセージなんでしょうかね。 【もとや】さん [DVD(邦画)] 8点(2009-05-26 01:35:59) |
《改行表示》4.甘過ぎず苦過ぎず。 人肌燗で清濁併せ呑んだ気分。 【michell】さん [DVD(邦画)] 8点(2009-05-18 22:51:59) (良:1票) |
《改行表示》3.《ネタバレ》 この映画は、自分の周りにおこる様々なこと(=ぐるりのこと)から「距離」を保つことの大切さを語りかけてくれます。「距離」とは「逃げる」ことではありません。物事にぶつかりそうで、ぐちゃぐちゃにされるほど近くもなく、対象がボヤけて何がなんだかわからなくなるほど遠くもなく、ほどよい、心地よい「距離感」です。カナオは、裁判を描く仕事を通じて、被告や被害者の目や手の動きを見つめながら、社会や人とのほどよい距離を見つけます。祥子は花の絵を描きながら、花びら一枚一枚を丹念に見つめることで、自分や家族が抱えてる問題を見つめられる距離を見つけます。 問題に真正面からぶつかれ!といわれ、新たな問題を引き起こしてしまう現代の問題解決方法では何も解決しないんだよ。そもそも問題なんて存在しないし解決する必要もないんだよ。そうやさしく語りかけてくれるよい映画でした。 【爆裂ダンゴ虫】さん [DVD(邦画)] 8点(2009-03-19 16:52:15) (良:1票) |
2.この監督が描く「救済」の感覚が好きだ。前作『ハッシュ!』ほどの爽快感はないものの、90年代の日本を舞台にどっしりと腰を据えた作りは、他作品にはない安定感がある。人と人はぶつかり合ったりすれ違ったりするが、磨り減った心を回復させるのは人しかないというメッセージが快い。宮崎勤事件をはじめとする日本の暗部を「法廷画家」という立場から見据えたリリー・フランキー扮する主人公の優しい目は、そのまま監督の視線と重なる。木村多江という「女優」を発見した功績も大きい。 【フライボーイ】さん [DVD(邦画)] 8点(2009-03-04 23:55:32) |
1.最初は長回しも多くちょっとダレ気味に感じましたが、出産を間近に控え幸せそうだった二人の人生が一転(ここのシーンの編集の仕方凄ぇ…)するあたりから急に面白くなってきました。嵐の夜にカナオが翔子に告白したことは、きっと第三者(法廷画家)として他人の人生を見つめ続けた結果に得たひとつの答えだったのだと思います。久々にずっしりくるいい映画でしたけど、裁判のシーンの一部があまりに生々しいため(特に最後のヤツ)、二度は観たくないです。 【とかげ12号】さん [映画館(邦画)] 8点(2008-10-26 17:54:21) |