1.「オアシス」を手掛けたイ・チャンドン監督らしい、とにかく救いの無い、胸が締め付けられるような重苦しい映画。
チョン・ドヨンの演技がとても素晴らしく、悲しみが痛いほど深く伝わってくる。
素朴で不器用な独身男を演じるソン・ガンホの存在が、唯一差し込んでくる光を表しているのかもしれない。
人間の精神が壊れていく様を、チョン・ドヨンは鬼気迫る演技で表現していた。
神を信じている時の心が満たされている表情と、神に裏切られたと思い知った時の表情がまるで別人のよう。
映像の美しさもこの映画の虚無感を引き立たせていると思った。
心に傷を持たない街の人々はキリスト教信者たちを冷笑し、一方信者達は一心に神を信じることでとても幸せそうに生きている。
この対比もリアルだった。
ただ、あまりに救いが無い。実話を元にした映画では無いのだから、いくらなんでももう少し救いが欲しかったかも。
ラストシーンの受け取り方によって評価が大きく分かれる映画でしょう。
僕は途中までは満点に近い映画だと思って観ていた。
もしかしたら、満点の人もいるかもしれないし、0点の人もいるかもしれない。
イ・チャンドン監督らしい賛否分かれる挑戦的な映画だと思った。