5.《ネタバレ》 フィクションといえる内容だが、実際の事件を元にしているためか、100%フィクションと感じさせないリアリティのある仕上がりとなっている。
実際に本作で描かれているものに近い銀行があったにせよ、本作に描かれている荒唐無稽さを“荒唐無稽”と感じさせない点が本作の良さではないか。
社会派映画のテイストにエンターテイメント要素やヒューマンドラマ要素を上手く混ぜ合わせて、質の高い映画となっている。
テンポも非常に良く、緊張感も常に保たれている点も評価したい。
本来ならば、辟易するようなムチャクチャともいえるグッゲンハイム美術館の銃撃戦もこのような仕上がりのためか、何故かムチャクチャさを感じさせず、逆に感動モノの仕上がりとなっている。
また、この手の作品としては、ストーリーもかなり分かりやすく整理されており、初見でも全く問題なく付いていける。
ラスト辺りの展開はややリアリティから外れていくが、どこかでオチを付けざるを得ないため仕方がないところがある。
ややトーンダウンしているところはあるが、個人的には逆に上手くオチを付けたとも感じられた。
男としての生き様や美学が込められているのではないか。
“正義”のために法の外に出ようとしても完全には出ることができない男の“悲哀”、“正義”のための行動をしたとしても“強固なシステム”に対しては、一人の男のチカラの“無力さ”などを描くことによって、「チャイナタウン」のような虚無感を漂わせている。
行き場がなく出口のない“怒り”を放置する辺りは製作者の思い切りの良さも感じさせる。
クライヴ・オーウェンもかなり熱演している。
法の外に出ることを決意したオーウェンとワッツが向き合うシーンでのオーウェンの“眼”が非常に印象的だ。
“眼”や“雰囲気”だけで演技できており、改めて高い演技力を感じられる。
本作によって、オーウェンとワッツを高く評価したくなった。