7.《ネタバレ》 TVシリーズの1作目をリアルタイムで観られたのは、本当に幸運だったと思っています。金曜の深夜、さぁ寝ようか…って時にたまたま流れていた新番組。ぼんやり観ていたら目が離せなくなって…こんな夜中にこんな凄いドラマ流して良いのか?って。
TVドラマのDVDセットを買ったのは、後にも先にもTRICKとTRICK2だけ。私にとって本当に特別な作品でした。
TRICK劇場版の出来がイマイチで、金曜ナイトドラマからゴールデン帯に進出した第3シーズンで、ガッツ石まっ虫とかって悪ノリキャラが出た時点でTRICK熱が冷めて、パタッと観なくなりました。
前置きが長くなりましたが、劇場版4作目にして最後の最後との事で、自分の中でもこの作品群に決着を付ける意味で、劇場に足を運びました。
まぁ酷い出来です。第3シーズン以降の悪ノリ・テイストはそのまま。マンネリ化したドラマパート。面白くないギャグ。ノルマでもあるのか?ってくらいに、質より量と言わんばかりに、1分に1回ペースでコテコテのつまらないギャグを入れてくる。稀に初期の頃みたいな面白いギャグもあるんだけど、つまらないギャグのラッシュに埋没してしまうのが残念に思います。
ギャグとドラマのバランスが逆転しているから、奈緒子も上田や矢部に対して最初からタメ口・呼び捨て。いや基本は“さん付け”で呼ぶから、ギャグパートの“呼び捨て”が活きるんでしょ。
劇場版になるとどうしても人がどんどん死んで、重たい空気になるのは相変わらずです。ただ、そもそもこのドラマは、本物の霊能力者に殺された父の真相を追い求める奈緒子の物語。結構重いんです。菅井きんと母之泉って、視聴者に1作目エピソード1を意識させる演出が、本当に最後の作品として創ってるんだなぁって思わせます。
最後の最後で芸能界を引退した前原さん登場。やっぱTRICKは菊池でも秋葉でもなく、石原なんだと再認識。瀬田くんも出てほしかったな。大病される前の元気な野際陽子さんが観られるのも、今思うと嬉しいです。
上田次郎は、あのキャラのままで現在まで続けても、何ら違和感を感じないキャラクターですね。矢部謙三も。
だけど山田奈緒子は…仲間由紀恵も本作では34歳。マンネリドラマだけに、20歳の頃から成長してないキャラを演じ続けるのは、彼女もきっと苦しかったと思います。気になったのが南国が舞台なのに奈緒子は、昼夜問わず終始長袖&ロングスカート。単に日焼けできないのか、肌が弱いのか、自分の代表作の最後だから、頑張ってくれたんだと思います。でも最後は半袖でしたね、ひと安心。
フーディーニで始まりフーディーニで終わる。「上田さん、最後に一つ賭けをしましょう・・・そしたら、餃子と寿司を死ぬほど奢ってくれ!」死を前に上田に見せた、奈緒子の寂しそうな精一杯の笑顔。
「生まれた時から、笑ったり、冗談を言ったりすることが苦手だった…練習しても上手くいかない。」第一話で一番最初の奈緒子の自己紹介。そんな彼女の14年ぶんの笑顔に、もう涙が止まらない。そして鬼束ちひろの神曲『月光』。ギャグパートにクスリとも笑わなかった劇場の、あっちこっちからすすり泣きが…みんな照喜名みたいにTRICKが大好きな人たちなんだな。だってみんな、公開初日の最終上映に来るくらいなんだもの。
単にこの映画が終わるのではなく、14年前の金曜深夜から続いた物語が、いま終わる。
この作品でブレイクした仲間由紀恵と阿部寛は、今後も芸能界の第一線で活躍するだろうけど、山田奈緒子と上田次郎には、もう会えないんだなって。
深夜0時直前の研究室。出会った時と同じマジックを見せる奈緒子と、目に涙一杯貯めて嬉しそうに微笑む次郎。山田と上田の2人だけの“ラストステージ”。
なんと完璧なエンディングを用意してくれたんだろう。あまりの余韻に劇場が明るくなっても暫く立てませんでした。
客観的に観て中身は3~4点です。だけど14年も続いた物語の、期待を大きく上回る素晴らしいエンディングに、この点数を付けさせていただきます。