4.《ネタバレ》 ディズニーのWヒロインがレリゴーで世を席巻する中、ジブリもWヒロインを採用。ミステリー調のストーリーテリングと、スーパーネガティブな主人公が、異色さを醸し出す一方、「不思議な経験を通して、ちょっぴり成長する女の子」という、ジブリの鉄板プロットに沿った良作となっている。
仕上がりに関して率直に言えば、物足りないと感じた部分はある。
例えば、マーニーにまつわる真相については、最後は語りで大部分をまとめてしまい、拍子抜け感は否めない。
主軸となる安奈の成長についても、やや記号的な描かれ方なので、もしくは時間をかけた方がよかったのかもしれない。
それでも個人的には、不思議な味わい深さを感じる、とても満足できる一作だった。
面白いと感じたのは、杏奈の成長の着地点、「自分は外側の人間」と決め込んでいた彼女が、どのように成長したのかという点だ。
普通、映画で描かれるような成長をすれば、外側だった人間が、内側に入り、みんなと仲良くハッピーエンドという終点が用意されると思う。しかし本作では、正当な成長過程を描きながらも、異なった終点に辿り着くのが興味深い。
マーニーとは、杏奈の人形に自分の憧れを投影したような存在であるとともに、似ているようで違う、水辺に映りこんだ自分のような面もあった。
マーニーと杏奈の立場が入れ替わリ始めたのは、マーニーとの交流で杏奈の考えが変化し、自分が愛されていることを受け入れ始めたからだろう。それ故に、人を許すことのできなかった杏奈は、マーニーを許すことが出来たし、「外側の自分が嫌い」だったことについても、「外側でも大丈夫なの」と思えるようになった。
結局、ふとっちょぶた(本名忘れてスマン)と大親友になるとか、そんな大きな変化は起きていない。とりあえず仲直りが出来ただけ。でもそれぐらいのちょっぴりの変化でいい。杏奈の心は大きく成長したのだから。
杏奈は「外側」のまま。でもそんな私が嫌いとは、もう思っていまい。
「ありのーままのー」ではないが、自分を受け入れること、そんな気負うことのない優しいメッセージが、美しい風景や空気感とともに、すっと心に沁みこんでくる。この不思議で優しい感じ、そしてテーマ曲の心地よさ。
理由もなくプリシラ・アーンを起用したわけではない。映画が終わってもすぐには席を立たず、音楽に身を委ねて、爽やかな余韻を楽しみたい。