26.《ネタバレ》 スピルバーグにしては少し退屈な映画だったが、あの宇宙船のインパクトは凄い。
キューブリックで言えば「2001年宇宙の旅」とも言える最も退屈な部類の映画であり、最も魅力的な一篇と言える。
ハワード・ホークスとクリスティアン・ナイビイが組んだ「遊星よりの物体X」を思い出すセリフやシーンがある。
ジョン・カーペンターは「遊星からの物体X」として地球外生命と戦う映画を継承したが、スピルバーグは「遊星よりの物体X」で研究資料として我が物にしようとする・・・いや、地球外生命との相互理解の可能性を模索したキャリントン博士の心持でこの作品を撮った。トリュフォーは正にキャリントン博士。しかし、劇中のトリュフォーは「話せば解り合える」という面持ちでコンタクトを試みる。まるで「野性の少年」と心が信じると最後まで願ったように。
「Watch the sky」のセリフも「遊星よりの物体X」に因む。
今までファースト・コンタクトを描いた作品の人類は、大抵襲われ、戦う事になる。
ロバート・ワイズの「地球が静止する日」ですら戦いは避けられなかった。
だが、スピルバーグはこの作品と「E.T.」で戦いの無い、“旅人と現地人の平和な交流”を描く事を選択する。こんなにも意味あり気に盛り上げておいて、ハッピーに終わらせるファーストコンタクトものはこの映画くらいか。
「蜘蛛巣城」を思い出す序盤で砂漠の中に現れる謎の物体。
「十戒」も「五戒」まで、この映画を「未知との遭遇寸前」まで見れた人間はけして多くないだろう。
ホラーテイストで未知の脅威を描いていく様子はスピルバーグのB級魂を強く感じる。
というより、B級とされる娯楽映画を超A級に押し上げたのはまぎれもなくスピルバーグです。
俺に言わせりゃジャン・ルノワールやハワード・ホークスといったアメリカ映画の傑作群の再評価を推し進めたのは、ゴダールやトリュフォーといったヌーヴェルヴァーグよりもスピルバーグやジョン・カーペンターの影響の方がよっぽど強いと思うのだけれど。
そんなトリュフォーとスピルバーグが組んだ同人的映画がこの「未知との遭遇」である。
UFOを追うトリュフォーの同人クラブ。
ファースト・コンタクトのシーンを見るだけでもこの映画を見る価値があるぜ。本当にデケえ。
「激突!」や「ジョーズ」で散々見えない恐怖を描いてきたスピルバーグが、この映画ではあっさりと映してしまう。