3.冒頭、京大事件(滝川事件)をモデルにした物語であることが示されるけれど、内容的にはその後日談のような展開が中心で、弾圧による夫の死と、残された妻が力強く生きていこうとする姿が描かれます。後半、スパイの身内として冷たい視線を浴びつつも、農作業に励む原節子の姿が、これでもかこれでもかと描かれる、このあたりのプロレタリアートな感じが、例によって例のごとく、もうホラー一歩手前なんですけれども。
あまりこの路線を突き進むと、都会生活よりも田舎の農作業の方が尊いんだ、みたいな感じになってきちゃって、胡散臭くもなるのですが、農作業の後、川で休める手と、ピアノを弾く手とが呼応し、うまく回帰していく。いや、それより何より、後半の迫力自体が、そんな胡散臭さなど吹っ飛ばしてしまう訳ですけれども。もの凄い「怒り」のようなものが、感じられます。
そして実際、この泥まみれで働き続ける原節子の美しさ。最初の方でうわー変な髪型だなあと思ってたら(失礼)、その布石だったか、と。
なんと、杉村春子ですら美しく見えてきてしまう、ってそんなアホな(って、そんな失礼な)。
ところでタイトルに「青春」なんていう言葉を入れちゃうのは、どうなんですかね。実際の内容よりだいぶ甘い印象になってしまいますが。