《改行表示》24.《ネタバレ》 普通とは違う意味でもう見返したくない、見直せない映画。あのカタストロフィとラストカットの後で、もう一度序盤から中盤にかけての牧歌的なコメディを観るのは辛すぎます。 題名は『鬼が来た!(英題:DEVILS ON THE DOORSTEP)』。何者かに捉えられた花屋が村人に拷問の末に殺されると思って吐いた台詞ですが、鬼は玄関にやってくるのではなく、心にやってくるのでしょう。日本兵による村人への虐殺の引き金を引いた花屋、飴を村の子ども達に配るなど優しい軍人としての姿も見せていたが最終的にその子どもを刺殺する野々村、憎しみを抑えきれず俘虜となった日本兵を斧で殺して回るマー、統治のために自国民を粛清する国民党、そして最後にマーの眼差しを受けつつも絶叫と共に刀を振り下ろす花屋。誰の心にも鬼が住んでいることを忘れてはいけない。それは世界中の国籍を問わず全ての民族に対して言えることです。だから監督は態々国民党による処刑の場面も挿入したのでしょう。 意地が悪いのは、態々剣の達人のシーンを入れていることですね。何故か達人の一太刀によって死ななかった花屋を見て達人は「彼等はここで死ぬ運命ではない」という。彼等がそこで死んでいれば最後の虐殺による悲劇も起こらなかった。彼等があそこで死ななかったのはメタ的にいえば観客にあの虐殺と映画のメッセージを観客に伝える為に外ならない。 チアン・ウェン監督は本当にセンスがある方なのだと思います。中国映画の名画で良く見る山村の長閑な雰囲気、イタリアの名画のような心暖まるコメディ演出、迫力ある映像で見せ付けられる虐殺シーン。優しさと絶望が混じり合い描かれる人間の業。 【民朗】さん [DVD(字幕)] 8点(2014-02-03 09:35:50) |
《改行表示》23.《ネタバレ》 二人の捕虜を巡ってどこか牧歌的な雰囲気で、コミカルなシーンも多い。ところが、終盤で思わぬ展開に。和やかな宴会が村人への大殺戮に変わっていくさまは息を飲む。堰を切った濁流のようにどうにも止まらない残虐行為の連鎖。中国映画らしい反日的な描き方は日本人としてはしんどいし引っかかるが、それをも超えた戦争の狂気、集団心理の怖さはあった。 二人の捕虜を連れてきた男の正体は最後まで明かされないなどシュールな面もあって、なにか心にとまる作品。ラストの主人公の首は、憑き物の鬼が落ちたような表情が印象的。そこだけカラーになるので、俯瞰で見ている監督の達観した顔にも見える。狂気と滑稽さが感じられてこの映画にふさわしいラスト。 日本に反感のある中国人が観れば、鬼は憎っくき日本人でしかない。ところが、フラットな気持ちで観れば鬼は誰にでも宿るように見える。視点によって見え方が変わってくるホログラムシールのような作りは、中国当局の検閲を考慮してのものなのだろうか。日本人役者のセリフが聞き取りにくいのと、モノクロでは見にくいのでカラーで見たかった。 しばらく後に再鑑賞。やっぱり面白い。 花屋が通訳から教えられた罵倒が新年の挨拶だったのは傑作で、緊張と緩和が生む笑いの最たるもの。 【飛鳥】さん [DVD(字幕)] 8点(2013-07-11 23:08:39) |
22.《ネタバレ》 恨み憎しみを吐くつもりが、通訳から教わった言葉は全く別の言葉だった…というさわりだけ知っていて、ずっと気になっていた作品をようやく見ることができました。そのさわりの設定と、時折挟まれる笑いを誘うシーンで、ハートウォーミングな展開を信じて疑わなかったのですが、酒塚の登場でとんでもない展開に! 人間の愚かさと弱さからくる醜い部分をずっしりとボディブローされた気分です。主人公のチアン・ウェンと酒塚役の澤田拳也の存在感は、それぞれにすごく良かったです。澤田さんの登場シーンは「どっからこんな日本人俳優を見つけてきたんだ」と思うほど異様な目力を放っていました。調べてみたら、あの立派な体格から想像したとおりアクション系の俳優さんだそうで、それが少し残念です。いい監督さんに育てられたら、黒澤明作品の三船敏郎みたいな存在感を出せる人に思えます。主人公のチアンさんもすごく映画の空気感を高めていたと思います。その馴染みやすいキャラ建てがラストで香川さんを凝視する表情は脳裏から離れません。その瞳が観るラストシーンだけが鮮やかなカラーとなって人の醜さを映す。たまりませんでした。やりきれないです。やりきれないけど、嫌いになれない、良質の作品だと思います。 絵的には、恋人の顔が逆さまに映されるカットが印象的でした。主人公役のチアンさん自身が監督なんですね。 【だみお】さん [DVD(字幕)] 8点(2012-10-17 00:20:35) |
21.《ネタバレ》 日本占領下であるから日本人、とくに軍人を憎く思う気持ちはあっただろうが、それでも自分の手で人は殺せないってところが人間らしさ。また花屋小三郎も最初は「俺を殺せ」「死にたい」と喚いていたが、いざ殺されるとなると怖くてたまらない。また怪我の手当てをしてもらった時は嬉しかったし、感謝もしている。花屋も大日本帝国軍人である前に人間だ。花屋は村人側と契約を結び、帰還した。だが、「なぜ生きて帰ってきた?」と鉄拳制裁が加えられ、嫌な予感…。しかし、契約は守ろうと酒塚さん。友好的なムード…。あれ? ハッピーエンドなのかな? と思い始めた矢先、惨劇が待っていた。花屋は村人の下で過ごした時間が長い為、飼い慣らされたと判断したのか、それとも日本降伏の知らせが関係していたのか、どうも難しい。この映画を完全には理解できなかったが、凄い映画だってことはひしひし感じた。 【リーム555】さん [DVD(字幕)] 8点(2011-08-31 19:00:37) |
《改行表示》20.《ネタバレ》 頭のいい人が頭の悪い人に向けて放つ皮肉に満ちた映画。 通訳ネタとかベタやけど笑えるし中国の村と日本軍の交流やその裏切りまでは普通の良質映画を装ってたんやけどねぇ。 日本人も中国人もみんなそれぞれのお国柄の病気を持ってるということかな?? もう一回くらい見ないと製作者の真意がわからん。 【CBパークビュー】さん [DVD(字幕)] 8点(2009-07-28 12:07:41) |
【Michael.K】さん [DVD(字幕)] 8点(2009-03-08 23:02:26) (笑:1票) |
18.《ネタバレ》 脚本が本当によく練られている。あのオチは正直やられた。そして、音楽の使い方がとても上手い。いろんな戦争映画を観てきたが、どの国だって戦争は嫌なもの。それが十二分に現れた作品。観る人を選ぶ映画であろうが、とことんリアリズムに拘り、エグいシーンもお構いなしに映し出している辺りは非常に好感が持てる。子供を殺すシーンはかなり驚きはしたが。学校ではこんな映画は上映できないが、皆に観てもらいたい作品の一つである。そして、中国映画であることも忘れてはならない。 【TOSHI】さん [DVD(字幕)] 8点(2008-09-15 00:09:34) |
17.話が歴史から寓話へ半分溶け出しているようなところが面白い。戦争について考えると、どうしてもそうなるのかもしれない。一般人にとって戦争はとりあえず「迷惑」なんだな。でも迷惑のレベルでなんとかやり過ごそうとしても、何かのきっかけでたちまち狂気の渦に巻き込まれ、迷惑どころではない事態に雪崩れ込んでしまうことがある。傍観者で居続けようとしても向こうから積極的に関わってくる戦争というものの怖さを、新たに見せてもらった気がする。最近の映画はロングショット主体で芸術性を出すのが多いなかで、久しぶりにアップを多用し、それでも安っぽくならない映画だった。こそこそした感じも出てるし。 【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 8点(2008-06-18 12:18:38) |
16.中国人が日本人の気質について理解を苦しむことがよくわかる。ラストシーンが特にそのことが表現できていたと思う。おもしろかった。中国が日本に占領されていた時代のことがわかって勉強になった。 【ホットチョコレート】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2007-08-12 08:33:25) |
《改行表示》【NIN】さん [DVD(字幕)] 8点(2006-07-18 17:09:38) |
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14.《ネタバレ》 「日本人は中国人に対して、映画と同じようなことをやっていたんだろうな」と考えさせられたりもしたし、同時に観ていた時のモヤモヤ感が消えてスッキリした。もし花屋が中国人を殺していなかったら、「なんでそんな急に良い関係になるんだ?」と冷めたままでいた。だから、乱闘が始まった時に「おっ、いいね」とうれしくなった。登場人物、一人一人の行動に納得のいく意味があってとてもよかった。 【Syuhei】さん [DVD(字幕)] 8点(2006-05-27 18:21:19) |
13.面白い映画だけど日本に対する反感を呼び起こしかねないヤバイ映画。 【ジャザガダ~ン】さん [インターネット(字幕)] 8点(2005-10-31 00:20:41) |
12.これは日本人が観るべき反戦映画ですね。 日本人監督では描き得ない、ある状況下での日本人特有の思考パターンをゾッとするほどくっきりと描写しています。 終盤の展開には凍りつきました。 まさに鬼です。 創業60年のそば屋の倉庫にひっそりとしまってある古びた鏡を覗いたら、血だらけの鬼が仁王立ちしてた感じです。 学校でも教えてくれなかった一番観たくない醜い姿ですが、日本人が観ておくべき必須の映画じゃないでしょうか。 恐怖による支配は憎しみ以外何も生みはしないというメッセージが深く心に突き刺さりました。 【Beretta】さん [DVD(字幕)] 8点(2005-09-16 02:30:33) (良:1票) |
11.日本人は酷い。この映画を見るからにそれは確実のことで製作者の意図もそこにあるはずだ。日本人は戦争の時中国人に酷いことをしたんだ許されないだろう、それなのに中国人は寛大であり素晴らしい・・・と中国人が見たら普通に思うに違いない。日本人に対し中国人がいまだに偏見を持っているのはこの様な映画があり、そのような教育が行われていることを察することが出来る。どおりでサッカーの時ブーイングが酷かったことか。が、現代の比較的偏見を持ってない日本人の俺から見れば別に日本だろうが中国だろうが全く関係無くブラックコメディとして楽しめた。 【taron】さん 8点(2004-11-11 00:52:14) |
10.こういう映画を見て思うのは、自分が当時の日本について知らなすぎるということ。だから正しいのか間違っているのかさえ判断できない。原爆や空襲といった本土の悲惨さばかりじゃなく、もっと知らなければならないことがあるはずだと痛感させられた。それはともかく、姜文はホントにスゴイ俳優であり、監督だと思う。ここまで存在そのものに「気迫」を感じさせる人も少ない。 【あさ】さん 8点(2004-07-28 10:27:11) |
9.いろんな意味で衝撃を受けた映画。この映画は、「日本軍の蛮行」を告発する種の単純な戦争映画ではない。映画を観て湧き上がってくる感情は、怒りや悲しみではなく、人間の奥底に潜む残酷さを描いた「恐怖」そのものだった。村人と軍人との交流がユーモラスに展開された後、観客は突然奈落の底に突き落とされたような恐怖を感じる。そして誰もが感じる「なぜ?」という疑問。この疑問に対する回答は、当事者でさえも答えられないのかもしれない。 【konkon】さん 8点(2004-03-15 15:32:17) (良:1票) |
《改行表示》8.《ネタバレ》 確かに中国共産党軍が絡んでこないことは不満である。また、日本軍は虐殺をする非道な軍隊である、という前提の下で物語を作り上げていることも不満です。親日派の監督でありながらも、潜在的に中共の宣伝戦(日本人の虐殺は当たり前のようにあった行為であるという宣伝)に毒されてしまっているのは悲しくもある。 しかし、虐殺にいたるまでの日本軍は今までの中国映画での表現とは違い、規律を重視し農民と交流を持つ余裕もある軍隊として描かれているというのは素直に評価できる。虐殺へ至るきっかけと、その理由付けもなされているのも良いと思った(農民をテロ分子とみなして殺戮をしている)。単なる凶暴で極悪非道な無差別殺戮者集団として描かれてはいない。 日本軍による虐殺シーンだけを見て「やっぱり日本軍は鬼だなー」なんて、ここで思考停止してしまってはもったいない。 鬼って誰かな?「私」?「照屋」?「日本軍」?「主人公の農民」?「国民党」? 戦時下では誰でも『鬼』になりうる可能性があるのです。 反戦映画を名乗りつつ、結局は名ばかりで一方を悪人に仕立て上げるだけの映画がほとんどだが、この映画は違う。そこが素晴らしい。 ※隊長:澤田謙也がかっこいい!変な趣味はないけど惚れた。 【ねこぱんち】さん 8点(2004-01-21 08:41:37) |
7.《ネタバレ》 一瞬でも『この酒盛りでハッピーエンド?』なんて感じた戦争のことをまったく知らない無知な自分自身に幻滅・・・。戦争というものについて本当に考えさせられる作品でした。よくナチス関係の作品を観たときに『なんてひどい連中なんだ!』と感じますが日本人だって最低です・・・。お風呂やトイレ、歯を磨きながらも考え込んでしまいます。戦時中に徴兵されて戦争を体験した方々は毎日その当時のことを思い出して苦しんでいるのではないでしょうか?そう考えると本当に辛いです・・・。憲法第9条って本当に大切ですね。 |
【STYX21】さん 8点(2003-11-13 20:10:05) |
5.前半のややコメディタッチの描き方から、一転後半のショッキングな殺戮シーンになってびっくり。流れからこんな終わり方をするとは思わなかったので、より一層インパクトが強かった。こんなコトが一般的に、しょっちゅうあったんだろうと思うし、実際はこれ以上に悲惨なこともいっぱいあっただろうと思う。戦時下の支配する者、される者の狂気や人間の本質を当時のドキュメンタリーを見るようなカメラワークで見せてくれる。香川照之、チアン・ウエンの鬼気迫る迫力にも圧倒された。 【キリコ】さん 8点(2003-05-18 18:31:26) |