3.《ネタバレ》 ミュージカルの映画化。 そのままだと暗くなりがちなディケンズの「オリバー・ツイスト」を楽しく見られるのがいいところで、3年後に「小さな恋のメロディ」で再共演するマーク・レスターとジャック・ワイルドがオリバーとドジャーに扮しています。 同じく舞台からの映画化の「マイ・フェア・レディ」のように、大英帝国時代の下層・労働者階級の人々の描写が生き生きとしてダンスもすばらしい。 歌は聴くほどに味わいの出るもの、歪みや崩れのあるセットがリアルな景観を生む。 マークは「メロディ」とそれほどイメージは変わりませんが、青い上着にシルクハットのジャックはまだ声変わり前のキュートさで芸達者。(かわい~♪) オリバー・リードのビル・サイクスには野生的な色気があり、彼の情婦ナンシー(シャニ・ウォリス)が彼を思って歌う"AS LONG AS HE NEEDS ME"は、「レ・ミゼラブル」の"ON MY OWN"のように女の一途で哀しい愛をうたった佳曲。 しかし何といってもロン・ムーディ演じる少年盗賊団の親分フェイギンの存在感が一番かもしれません。 ピカレスク小説の性質もおびた原作のキャラクターを悪党ながら生きたものにし、忘れがたい印象を残します。 ブラウンロー氏とオリバーの血縁関係は残されているものの、異母兄モンクスや叔母ローズは登場せず、救貧院(ワークハウス)の教区吏バンブル夫妻を小悪党として再登場させるにとどまり、自分が見た映画化のうちでモンクスの出番があるのは48年のデヴィッド・リーン版だけになります。 原作ではそれぞれ刑に処せられる運命のフェイギンとドジャーが落ちのびるアレンジは、ミュージカルならではの明るさがあります。