1.たぶんこの映画、途中で寝ちゃった人は相当多いと思うし、事実私が観に行った回でもかなり大勢寝ていたようだ。しかしボロボロのガウン姿で頭ボーボーの不精ヒゲがこんなに似合うハリウッドスターもそうそういないだろうという個人的愛情と、タシュモア湖畔の美しい情景、ジョニデの住む古いキャビンのインテリアの素晴らしさにうっとりと見とれることが出来れば話は別である。私は基本的にジョニデに甘く、アメリカ北部からカナダにかけての晩秋の風景には死ぬほどヨワい。洋画を見る時の関心のかなりの部分をインテリアの素晴らしさが占めており、この作品でジョニデが横たわるカウチや家具装飾品の数々は過去に見たあらゆる映画の中でも特筆に値すると断言する。こういったアイテムに非常に細やかな配慮が行き届いている上に、押しつけがましくなくさりげない照明の凝り方とか、カメラワークに質の高さを感じさせられる作品。どうということのないストーリーはあまり気にせず、近頃珍しいアナログな映像感覚を堪能すべき。正直「最近のスティーブン・キングって何だかちょっとなあ」と思っている方、「ジョニデとブラピ、どっちが才能あると思う?」と訊かれて2秒以上答えに詰まる方に声を大にしてお勧めできる作品ではない。この程度のストーリーでいかにもいい加減なテレビまがいの映像を沢山見せられていると何となく見逃しがちな内容ではあるが、こういう丁寧な映像作りって最近のハリウッドでは非常に珍しいし、明らかに映像としての格が違うとだけは言っておく。ただのBではない。