1.《ネタバレ》 まだビデオレコーダーが自宅に無く、録画というものが不可能だった学生時代に、深夜放送で観ましたが、私にとって3つの驚きがありました。
一つ目は、映画の内容についてです。主題歌は懐メロでお馴染でしたが、私は【山脈のような試練を乗り越えて幸せを掴む格調高い大河ドラマ】のようなものを連想していたのです。しかし実際は、田舎町で繰り広げられる偽ラブレターの是非を問うものだったとは…そのギャップに驚きました。真面目なテーマを扱っている一方で、明らかに観客の笑いを狙ったコミカルな演出が散りばめられており、最後まで飽きずに観ることが出来ました。
二つ目は、日活映画のイメージについてです。私が物心ついた頃から、すでに日活はロマンポルノ路線に入っていました。そのため「以前は、こんな爽やかな青春映画を作っていたんだ!」と大変、新鮮に感じました。
三つ目は、吉永小百合さんの役柄についてです。吉永さんも、私が物心ついた頃から【おしとやかな女性役】が定着していたため、活発なキャラクターが新鮮、というより、伸び伸びと自然な印象を受けました。浜田光夫さんとのコンビ作品も、この映画を機に観るようになりました。
その後、原作を読んだり、1949年版・1975年版をテレビ放送で観ました。1949年版は原作に忠実で、タイムリーに【これからの男女交際・民主主義に基づく新しい日本】といった理想を高らかにうたった作品だと思います。一方、1975年版は【真剣な眼差しで見つめ合う】といった真面目な恋愛ドラマ調の演出が強調されていました。見比べてみて「同じ原作でも、こんなに違うものなのか」と感心したものです。
さらに後年、1963年版はビデオでも再見し、当時のお正月映画として公開されたと知りました。老若男女が一堂に会し爽やかな笑いに包まれながら新年を迎えた当時の映画館の様子が目に浮かんだのと同時に、そうした位置づけの映画として、脚色・演出もピッタリだと、あらためて思いました。また、最近、某バラエティー番組で、高橋英樹さんが「三枚目役だったので、撮影当時は非常に抵抗感があったが、そのときの経験が役に立った」といったことをおっしゃっていました。私は高橋さんが熱演してくれたガンちゃんが大好きです!。
さて、採点ですが…一般的には“お正月映画”であって佳作レベルかもしれませんが、私にとっては【3つの驚き】と共に忘れられない作品です。大甘かもしれませんが、8点を献上しちゃいます。