30.《ネタバレ》 アメリカ視点での硫黄島。たまたま写真に写ってしまったがために意図せず英雄に仕立て上げられた兵士たち。戦争は英雄を必要とするのだろうが、英雄なんていないのである。ただ、そこにいる一人一人の平凡な人間が、見えない力によって翻弄され、人生を振り回される。そのことを嫌が応にも訴えかけてくる作品である。 【いっちぃ】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2020-11-25 00:48:05) (良:1票) |
29.普通はこちらのほうを先に観るようだが、日本人であれば先に「硫黄島」を観てからこちらを観たほうが、自国側そしてそのいわば舞台裏(アメリカ側)という意味でしっくりくるような気がする。そして兵士の葛藤や、イーストウッドの扱う「死」、それも単なる死ではなく、「生」の下に埋もれる無数の死を描く本作は見ごたえがあった。ハリボテの山に星条旗を立てる、というこの上ない茶番の際に三人がフラッシュバックとして死を思い出すのは偶然ではない。どんな茶番であれ、生きていることは無数の死体を土台とするのだという教訓の象徴としてあのシーンは存在する。逆に言えば、生を規定しているのは過去の死であり、それは誰も覆すことはできない。「英雄なんていない」というセリフを、「硫黄島」に当てはめるならば「英霊なんていない」とするのがぴったりであるし、そうすることがイーストウッドのしたかったことであろうと思う。 【Balrog】さん [DVD(字幕)] 8点(2011-05-19 00:08:57) (良:1票) |
28.《ネタバレ》 硫黄島の方でも述べましたが作成意図が何にも勝ると自分は考えるので、 どういう理由でこの作品を作ったか?を考えると賞賛に値する事は自分の中では多くを占めています。 だから映画的興味よりも主人公たちの苦悩を通して映る真実と時代に大きい価値を感じます。表現方法も無理に戦争映画にせずにドキュメンタリー番組のように淡々と時間を行き来しながら進んでゆく。この映画を観てアメリカが愚かだと感じた人は逆に日本も愚かであった事を硫黄島からの手紙を観て感じて欲しい。 双方に真理と真実がありそういう過去があっての現在であるのであれば、人類はそうやって学んで私たちは過去をそう感じることができるようになったのではないだろうか。 硫黄島と星条旗の映画の温度の違いはそのまま日米の違いと言えると思った。 どちらもそのとおりでその違いについて比較しても仕方が無いと感じました。 星条旗は1つのモチーフであってちょっと戦争自体の大きさからすると映画としてはそれを通して見せる(戦争)部分に短編ドキュメンタリーのようなちぐはぐ感はある気がする。 【森のpoohさん】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-06-26 01:06:27) (良:1票) |
27.イーストウッドの映画には常にイーストウッドがいた。本人が出ていなくても彼の分身がいた。前作『ミリオンダラー・ベイビー』のレビューで私は「イーストウッドはどこに行くのだろう」と書いた。現実に打ちのめされたアウトローはどこに行くのだろうと。彼は帰ってこなかった。この映画にイーストウッドはいない。それは私がずっと望んでいたことでもあった。だから作品の内容とは別のところでこのイーストウッドの到達点に感無量になった。しかし同時に寂しくもあった。この作品は英雄を否定する。英雄は作られる。映画のヒーローもまた作り物なのである。映画が現実味を帯びるにしたがいヒーローはヒーローとして存在しにくくなり、もはやイーストウッドもイーストウッドの分身も入る余地がなくなってしまった。何度も言うがそれは私が望んだものであったはずなのにとてつもなく悲しいことのように思えてならない。英雄の否定は戦争を題材としているからであって、イーストウッドの不在は偶然なのかもしれないけど、これまでの彼の映画の軌跡からするとやはり、ひとつの到達点と考えるのが自然だと思う。私の心境は複雑です。 イーストウッドの新しい映画を拍手をもって歓迎すると同時にイーストウッドの帰還を待ち望む自分がいる。 【R&A】さん [映画館(字幕)] 8点(2006-12-11 13:01:32) (良:1票) |
26.《ネタバレ》 スピルバーグが資金集め協力したのよくわかりますね、戦争遂行のために利用される兵士の物語ですから。イーストウッドは、運命に翻弄される市井の人描くのが執念になっちゃってるみたい。たぶん原作の流れに則って、また戦史でもあり、時間の移動を除いてシナリオを極端にいじくれない制約があるはずですから、登場人物への感情移入を期待しちゃいけません。ただ「日本軍は必ずバンザイ突撃をかけてくる」という内容の台詞をどこかに挿入しておいてほしかったです。それまでの日本軍の戦い方を説明してくれるし、硫黄島の戦いがどんなに特異だったのかが第1部の段階で理解できます。それに塹壕内の暑さを現すシーンもほしかった。米軍側が感じた驚きと恐怖を散りばめておくことで第2部で腑に落ちる、ってこともあるわけですから。語り部役を絞って端的に語ったシナリオだったら良かったかな。戦闘シーンの凄まじさはライアン二等兵のほうが凄かったです。ま、戦線の組み立てかたが違うので比較してはいけないでしょう。たぶん、12月公開の第2部とセットで語るべき作品です。未公開の「硫黄島からの手紙」予告編が最後についてますので、エンドロールで立っちゃう人は我慢がまん。得点は現時点でのもので、後に変更する可能性もあり。しかし、アメリカ白人が監督する日本の戦史って観るのが怖い、米軍での栗林中将の評価は異常に高いらしいですし、大日本帝国軍人らしくない戦いを繰り広げたわけですから。 この戦闘が東京大空襲に直結し、原爆投下への布石になったことも匂わせてくれれば言うことなかったんだけど… 〈追記12/11〉必ず2作品セットで観るべきです。ということで2点加点。 【shintax】さん [映画館(字幕)] 8点(2006-11-01 16:29:46) (良:1票) |
25.登場人物が非常に多く、かつ時間軸がバラバラなため、把握しきれないのが欠点ですが良い映画です。この映画は回想シーンが唐突で頻繁に使われますが戦争経験者のフラッシュバックを表現したかったのでしょうか。ただその演出は成功しているとは言えず、若干内容が掴み難くて取っ散らかってる印象です。ただメッセージ性は強烈で、地獄の戦場から生還してもなお苦難が待っていた兵士達の人生を見て戦争の愚かさを感じました。 【キリン】さん [DVD(字幕)] 8点(2013-02-10 23:13:58) |
24.《ネタバレ》 数ある戦争映画の中でも、かなり分かりやすくメッセージを投げかけ、取っ掛かりやすい作品になっていると思う。戦争は繰り返されてはならない地獄である、という通り一遍の反戦メッセージだけでなく、当時のアメリカと米兵の事情が描かれているのだ。戦争疲れで元気を無くした国民に向け、分かりやすい「真実」として、一枚の写真が取り上げられた、という図式。その裏には大義に巻き込まれ人殺しをさせられ、英雄に仕立て上げられた若い兵士たちの苦悩がある。幸運にも地獄から生きながらえて故郷に戻ろうと、その苦悩は消えることなく、死んでいった仲間こそ英雄だったと自分を責めることになる。何て気の毒なんだろう。あの戦争によって今のアメリカや日本の平和が成されたと、私たちが感じることが何よりの供養だろう。けれど彼らが辛く苦しんだ事に変わりは無い。 【ちゃか】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2010-09-16 19:21:40) |
23.観たいけど観ていて辛いかなと思い観ていなかった作品。テレビで「硫黄島からの手紙」をついつい観たことから決心して観賞。 これまた既に皆さんのレビューで語り尽くされた感があるので一言だけ。2作品セットなので、それぞれに立場を変えて描かれているのかと思いきや、基本的にはニュートラルな視線を感じました。勿論、主人公が違うのだから当然という程度の差はあるけれど、偏りは最小限度に抑えられている感じがしました。見事。 【タコ太(ぺいぺい)】さん [DVD(字幕)] 8点(2009-09-27 10:44:58) |
22.「硫黄島~」は封切り時に映画館で観てすぐにこれを観ようと思っていたが、かなり時間が空いてしまった。あわせてみると当時の日本とアメリカの経済力の格差をまじまじと感じる。ただ共通するのは戦争の愚かさ。戦争を直に体験している人が少なくなっている現代において、今やその抑止力となるのはこういった映画を普及させる事が大切ではないかとマジに思った。でもアメリカではインディアンの戦争恩給はないのか? 【kaaaz】さん [DVD(字幕)] 8点(2009-04-25 22:35:29) |
21.《ネタバレ》 アメリカ人にとって“Iojima”は今や苦戦の代名詞になっていますが、「苦痛を背負うヒーロー」を描いてきたイーストウッドには最適の題材だったのではと思います。確かにやり過ぎとしか思えないほどショー化した戦時国債募集キャンペーンには誰もが嫌悪を感じるでしょうが、アメリカが戦費調達にこれほどまで苦労していたとは意外でした。命を危険にさらす兵士が戦争では絶対に必要とされますが、大衆を扇動してでも国債を買わせて財政を運営しなければならなかった官僚も近代戦では必要な存在なのです。しかし、硫黄島の3人に銃後での道化役までさせたのは、あまりに残酷なことでした。「手紙」で描かれているように、日本兵は家族を守るために日本領土である硫黄島で死んでゆくのですが、攻める米軍にはもっと抽象的な「大義」が必要になっているのが対照的で面白いです。でも戦場の地獄の中では「大義」などけし飛んでしまい、海兵隊兵士も疑似家族である戦友を守るために戦うのです。ラスト死の床で主人公が硫黄島の海岸で戦友と泳いだことを思い出すシーンに、イーストウッドのメッセージが込められていた気がします。 【S&S】さん [DVD(字幕)] 8点(2009-04-24 00:43:01) |
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20.確かに、この映画を撮るならば、もう一本『硫黄島からの手紙』を撮らざるを得なかったのかも知れません、こんな“苦い”映画では、製作費を回収できない恐れがあるから。しかし、それだけに、本当に撮らなければならない映画は、コチラだったのかも知れないなあ、と。すなわち、もう一本の「よりとっつきやすい映画」とセットにして、までも。『~手紙』における、やや類型的なところのある人物像。圧倒的不利な状況で敵と戦う、明確な“絶望感”。それに比べてしまうと、こちらの作品の題材はいささかビミョー、まーはっきり言ってツマラン問題、と言う風に捉えられかねないところ。しかしその「比較されるリスク」を冒してまでも二部作の一つとして作られた本作は、時間を見事に行き来する、構成の巧みさに満ちています。テーマは、硫黄島に立てられる星条旗の写真の「捏造」問題。この有名な事件を、いまさら告発するように描くのではなく、否応なく巻き込まれた当事者の苦悩として描いています。ラストの方の断片的すぎる描写は、正直、好みではないのですが、それでも、観終わっての感想としては、「テーマだけ見ると、アンチヒーローもの。だけど、この映画で描かれる、“普通の”人たちが、“普通に”運命と戦う姿を見れば、やっぱりこれはヒーロー映画なのではないか」、と。 【鱗歌】さん [DVD(字幕)] 8点(2008-10-13 17:43:34) |
19.《ネタバレ》 クリントイーストウッドが何故日米相方の側から描いた戦争映画を作ったか、また何故硫黄島かを考える時、それぞれの兵士達が「何のために戦い、尊い命を犠牲にしたか」を主題に描きたかったのだ、ということがこの2作品からわかります。「硫黄島からの手紙」で栗林中将が「我々がここで戦う一日一日が本土がアメリカの攻撃にさらされるのを防ぐことになる」と明確に訓示している一方で、米軍兵士は劇中語られるように「一緒に戦う友人のため」せいぜい「国家のため」に戦うのであって、本土は戦場とは別世界であり、母国で家族が日本に殺される危険は全くありません。執拗なフラッシュバックや時代の跳躍も地獄の戦場との乖離を際立たせるための手法であり、本土で英雄を紹介するにあたり「これはショウビジネスなのだよ」とまで言わせる徹底ぶりです。クリントイーストウッドとスピルバーグ(プライベートライアンも同じ目的で製作と思います)が何故ここまで米軍に厳しい映画を作ったのかは、私が常々感じるアメリカ国民は参戦を納得していなかったことに通ずると思いますし、何よりも「何のために戦うか」を描く事が現在の「アメリカのあり方」に対する「草の根保守派」からの強烈なメッセージなのだと思います。硫黄島二部作において日米それぞれの兵士達の戦う目的が「旗」と「手紙」という題に象徴されているのです。 【rakitarou】さん [DVD(字幕)] 8点(2008-09-28 17:26:20) |
18.凄惨な戦場を後にしてきた兵士3人に向かって、「それがショウビズだ!」と安全圏の本国で言い放つ政治家。アメリカにとって「ショウビズ」なんだ、戦争って。今と同じじゃん! 分かっていたけど、ここまでストレートに言われると逆に唖然。大統領は率先して戦場で戦わねばならんシステムにしてしまえ! そして戦場でも「これがショウビズだ!」と叫んで砲弾を生身の体で受けてみよ! 「硫黄島からの手紙」より、こちらの方が映画としては断然良いと感じた。監督イーストウッドに初めて共感できた映画。それにしても、ジェイミー、大きくなったね。 【すねこすり】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-08-09 10:43:32) |
17.あんな島には死んでも行きたくないと思いました―それだけでも見た価値はあったのかもしれません。有名な写真ですが詳しい事は何一つとして知らなかったのでいい勉強にもなりました。戦争が勇気やら希望やらを生み出すなんて事は絶対にないんですね・・・それにしてもアイスやらご馳走が普通に食えてディーゼルが走ってるような国と大マジで戦争していたなんて空しいにも程があります。 【Kの紅茶】さん [映画館(字幕)] 8点(2007-08-09 02:25:21) |
16.時間軸の飛びのせいで集中力が結構とぎれやすいけど、あの演出はなかなか良かったと思う。登場人物が誰が誰だか分からなくなるのは、この映画では大した問題じゃないと思う。 【ケ66軍曹】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-06-02 15:52:43) |
15.本作とそれに続く『硫黄島からの手紙』を観てまず新鮮だったことは、戦争に対する一般市民の「距離感」。僕がこれまで観てきた戦争映画の多くは主に「戦場で戦う兵士/それを指揮する権力者/その犠牲となる罪無き民間人」という役回りによって構成されていたが、この硫黄島二部作はその基本構造を根底から覆している(特にそれが顕著なのが本作)。武器を持たない一般市民もまた、国債を買うことで戦争資金を生み出しているわけだし、自分たちの家族を最前線で戦う兵士として送り出している。つまり彼らもまた彼らなりに戦争に「参加」しているのであり、彼らが立つ場所は非戦闘地域ではなくあくまで戦線の最後方でしかない。ついつい忘れがちになるがそれが現実なのである。気がつけば「被害者/加害者」の二元論に陥りやすいこの問題について本作はまた新たな可能性を切り開いた。『硫黄島からの手紙』とともに長い付き合いになりそうです。 【とかげ12号】さん [映画館(字幕)] 8点(2007-02-28 22:40:13) |
14.重厚で大変素晴らしい作品だった。「硫黄島からの手紙」も既に見ているが甲乙つけがたい。新時代の戦争映画だと感じます。殊更に悲劇性を強調する訳でもなく、かと言って愛国心をやたらに煽る内容にもなっていません。凄い映画だと思います。 【はむじん】さん [映画館(字幕)] 8点(2007-02-14 02:40:29) |
13.英雄となった米兵の孤独がよく描かれていました。われわれ日本人の知りえない貴重な事実を目にすることができました。 【獅子-平常心】さん [映画館(字幕)] 8点(2007-01-11 01:16:15) |
12.《ネタバレ》 実話に基づいた映画にありがちなきれいにまとめた感じもなく、いろいろ考えさせられる映画だった。『硫黄島からの手紙』が映画の構成としてはストレートだったのに対してこちらは時間の流れの前後があって、少しづつなぞが解き明かされる形ではあった。見る前は硫黄島を両側から描いた片方という認識であったのだが、この一作で十分戦争の表と裏の部分が描かれていたように思う。 【HK】さん [映画館(字幕)] 8点(2007-01-09 18:23:20) |
11.《ネタバレ》 硫黄島~があまりに良かったので、翌日まだやってる映画館を探して観てきました。作品的には硫黄島~の方が好きです。そこは断然。あと、時間軸のせい?死んでいった本当の‘英雄’たちの印象がちょっと薄い・・。でも2部作って考えると、本当にイーストウッドって凄いなぁ・・。どうして硫黄島の話を日本・アメリカ双方の視点で撮ろうなんて思ったんだろ・・。この映画の予告で言ってたけど、この映画は双方の「気持ち」。そう思ってみると尚感慨深いかも。あと、硫黄島~と数箇所リンクしてるよね。硫黄島~とセットで観るのが当然ベストです。 【ネフェルタリ】さん [映画館(字幕)] 8点(2007-01-06 23:34:22) |