8.この映画を観ていてふいに、「美しい」と思った。
描かれる物語は「現実」であって、決して綺麗ごとだけでは済まされない内容なのだけれど、それでもやはり「美しい」と思った。
人生を謳歌する最中、突然あらゆるものからシャットアウトされてしった苦悩。
古めかしい潜水服を着せられ、海中深くに沈み込んでいくような閉ざされた世界の中で、それでも生きていこうとする人間の根本的な強さに、心を掴まれる。
左目の瞬きだけで意志を伝え、本を書き上げるという途方も無い営みの中で、彼が見出したものこそ、「人生」の美しさの本質なのだと思う。
とにかく映し出される「光」が美しい。
その光の美しさが、悲しみを和らげ、幸福感へと昇華させる。
映画というものは、あらゆる意味で「光」だと思う。
今作のような美しい「光」を見せる作品こそ、映画のあるべき姿なのだと思う。
世界は見えている以上に美しいということを、ビジュアルのそれ以上に伝える映画だ。