24.《ネタバレ》 阿部寛さんの演技は最近では褒めるのが当たり前になって来ました。
信夫を演じた高橋和也さんが役どころも良く作中では光って見えます。
特筆すべきは、孫達を演じた子役と言ってしまったら失礼に値する3人の役者さんです。
作品を通して大人達が作っている淡々と安定した世界観を壊すことなく、それどころか作中での夏という季節にシンクロするように作品に瑞々しさを与えてくれています。
3人の演技は勿論ですが『そして父になる』での子供達も同様の印象だったので是枝監督の演出や撮影現場の雰囲気作りが卓越していると考えるのが自然だと思います。
百日紅の紅い花を手に取って遊んでいるシーンは本当に素晴らしかったです。
家族だから言えない事、言ってしまう事、家族なのに伝わらない事、伝わってしまう事、家族の中で比較してしまう者、比較される事を否定する者、比較の対象として受け入れて貰いたい者等を親族の死を絡め、何気ない伏線を自然に回収させながら絶妙の距離感や台詞と丁寧な脚本、映像で厳しさや優しさとして小さくすれ違いながら表現されています。
長男の墓に水を掛けながら語りかけるとし子を死んだ兎に手紙を書こうと言った友達を笑ったあつしがじっと見ていますが、何年後かの墓参りで良多も同じ事をしています。
あつしの中に良多がじわじわと入ってくるというシーンを基に考えると、そんなあつしにも彼等の行動を理解する日が来るのかもしれません。
また、助けられた男性を長男の仏前に呼ぶ本当の理由を吐露するとし子の後ろで低く一定に鳴る換気扇の機械音は彼女の消える事のない怨念のような不気味さを増幅させる効果となっています。
登場人物が画の中にわさわさと居ても各人が的確な演技を見せてくれています。
しかし自然ではあるものの演技や演出に無駄や隙がなさすぎるので作品全体が無機質になってしまう箇所もあり、話の抑揚がかなり抑えられて各シークエンスもそれぞれに完結してまっている所が多く、そこからの発展が少ない為に見ているこちら側が委ねられるような大きな流れのようなものを感じられません。
この様な演出は監督の狙いだと思いますし私自身も劇的な展開やあざとい心理描写等を本作からは望んではいませんし程度の問題だと思いますが、話の本筋というものが掴みづらいと単なるサイドストーリーの集合体で成り立っている俳優や雰囲気で見せる作品という印象になってしまいます。
そこに少し上手過ぎる演出の弊害のようなものを感じてしまいました。