3.もはや「落ち目」となって久しいハリウッドのアクションスター、ジャン=クロード・ヴァン・ダム。
スター俳優として下降の一途を辿る自身の境遇を自虐的に描いた映画に、彼自身が主演するという今作の情報を得た時は、興味はかき立てられた反面、「ヴァン・ダムも落ちるところまで落ちてしまったのか……」と昔から彼の映画に親しんだ者として少し寂しく思えた。
しかし、必ずしもそうではなかった。想像以上に良い映画だったと思う。
「自虐的」という言葉はまさにその通り。むしろそんな言葉では足りないくらいに可笑しさを越えた辛辣さがこの映画に溢れていた。
右も左も分からないベルギー人俳優が、文字通り己の体一つでハリウッドの“スター”へとのし上がり、時代の流れとともに忘れ去られていった。それを当の俳優自身が真正面から演じる様には、想像を超えた哀愁が満ちていた。
誰かの言葉か、何かの映画の台詞か忘れたが、「ハリウッドは、人を噛んで吐き捨てる」というような言い回しがあった。まさにそれを地でいくようなヴァン・ダムの人生を、彼自身が独白するような映画だった。
ただし、そこに表れていたのは、落ちぶれたスター俳優の無様さだけではなかったように思う。
ベルギーからハリウッドに渡った時から、無くすものなど端からなく、正真正銘のゼロから歩んだ自らの道に対するアクションスターの意地。
そして、大衆から落ちぶれて見えるのであれば、それすらも自らがパフォーマンスして見せようとする表現者としての意地。
そういう一人の俳優の冷めやらぬ熱情を感じずにはいられなかった。
この映画は、一人のアクションスターのドラマであり、ドキュメンタリーであり、類い稀なエンターテイメントだと思う。