1.《ネタバレ》 波瑠にお預けを食らう欲情した濱田岳の情けない表情が、捨てられた子犬のような切なさを醸し出す。
少女からどんどん綺麗に大人になっていく隣室の同級生と、いつまでも立ち止まったままの冴えない主人公。
「ブリーフ、やめたほうがいいよ。いかにも童貞って感じで。女の子に嫌われるから」
憐れむような女の子の忠告が残酷に突き刺さる。
それでも同窓会で好きだった可愛い子と付き合うことになるのだから出来すぎだ。
倉科カナや波瑠が魅力的で、引きこもりにはもったいない。
引きこもりのライトなラブコメディかと思ったが、途中から空気が一気にシリアスに。
団地から一歩も出られなかった理由がわかって、悟の今までの奇行にも合点がいく。
体を鍛えていたのも、トラウマになった事件があったから。
この映画でマス大山の名言が聞けるとは思わなかった。
刃物を持ったチンピラ三人を瞬殺したのは痛快ではあったが、マンガ的すぎる嫌いも。
所詮は本を読んでの空手習得なので、落としどころを圧勝ではなく痛み分けで、悟の気迫にタジタジとなるくらいにしておいたほうがリアルなのに。
チンピラもステレオタイプの悪党だったのが少し物足りない。
団地という閉ざされた独特の世界の中で、悟が取り残されていく様子がうまく表現されている。
どうしても降りられなかった階段を、最後は随分あっさりと駆け下りていったが、ここでモタモタと大仰な芝居を見せられなくて良かった。
それだけ母の力は偉大だったということ。
人間のできた理想的なかあちゃんだったけど、大塚寧々が若すぎたのか、母子ものには弱いはずなのにどうも実感が沸いてこず、最後の日記にも泣けなかった。
中村義洋監督&濱田岳主演は「アヒルと鴨のコインロッカー」「ポテチ」を見ても、相性がとても良いようだ。