1.映像化不可能と言われている傑作小説は沢山あります。
代表的なものは日本ミステリ界に「綾辻以前綾辻以後」という言葉を作った傑作「十角館の殺人」でしょう。
これはいまだに映像化されてません。そりゃそうです。無理だもの。
他にも「ハサミ男」とかこの映画の原作の「イニシエーションラブ」とか映像化不可能と言われている小説は沢山ありますが、これらに共通するのは「文章だから可能なトリック」を用いている事です。
「文章だから可能」つまり「映像では不可能」なのです。
そりゃ映画化されるわけありません。
ところが驚いた事に「ハサミ男」と「イニシエーションラブ」は映画化されてしまいました。
「え、どうすんの?」
原作を知ってる人は映画化を知ったときに皆そう思った事でしょう。私も思いました。
結果「ハサミ男」は無茶した事で悲惨な結果となり、一方この「イニシエーションラブ」はとんでもないウルトラCを用いる事で映像化に成功したのです
さて、このイニシエーションラブですが、原作を読んだことがある人とない人ではまず映画の別の部分で驚愕するはずです笑
原作知ってる人なら「そんな強引な…失笑」です。
しかしその強引なウルトラCを用いる事であの原作を映像化したわけですから堤幸彦はほんとに天才なのかもしれません。
で、映画化されたこの作品ですが、ほんとにがんばってると思います。
80年代の雰囲気がプンプンであの原作をきちんと映像化したその努力にとにかく8点差し上げます。
が、しかし残念ながら原作の限界がこの映画にもはっきりと出ているわけで…
原作は「何も知らないで読むとびっくりする」小説で、逆に「何かある」と予想して読むと非常に完全にネタが予想できてしまう小説です。
有田がテレビで「すごいミステリ」と宣伝したおかげでそれ以降読む人は誰でも「これはなんかすごいトリックあるんだな」と身構えてして読む事になります。
そして身構えて読まれちゃうとこの原作のネタは非常にわかりやすいのです。感が良ければ本当に誰でもSideAの数ページでネタが予想できてしまう…そういう構成なのです。
実際に私も初読の時点で後半はただの整合性チェックになってましたし。
でオチを予想しながら読むとこれはもうただのパズルであって恋愛話としては「普通」なんですよね。
まぁ1つのネタにすべてをかけたストーリーなんてみんなそんなもんなんですが。
この映画版も原作小説と同じ弱点を抱えていて多分勘が良ければ初見でも序盤でネタバレします。
そしてそうなると、映画のおもしろさとしては…これどうなんでしょうね?
まぁそれでも世代的にこの映画の主人公達と2,3歳しか違わないほぼ同世代の自分としては、この時代の恋愛模様や時代背景は面白く観ることができたんですが、そうでない世代の人でしかもネタが序盤で読めちゃった人はどう感じるのか…
とりあえず素直にびっくりできた人はおめでとうございます!