1.《ネタバレ》 ヒロインにとって暮らし場所は「どこでも良かった」訳だが、映画の作り手にとっては海辺の街でなければならないのである。
花火の類との対比において、斎藤工と密会する小川に対する平山浩行の領域として、あるいはサーフボードから突き落とされ(落下)、
髪を濡らし、水圧にもがき喘ぐように歩むため、という運動的論拠もあるだろう。
躓き、よろめく上戸彩。普通の歩行のショットは稀だ。自転車を息せき切って漕ぐか、ふらつくか、足を取られてつんのめるか。
見よう見真似のぎこちない盆踊りも然り。
手で云えば、ハンバーグを捏ねる、藪蚊を払うなどのちょっとした生活動作から、マンション七階の呼び出しボタンを順に押していくなどの
心理表現まで、非意思的で不器用気味の身体性を強調することで、キャラクターの生の感触を伝えている。
上戸と伊藤歩の、視線交錯のサスペンス。クライマックスとなる踏切での光のドラマもいい。
クラクションや調理音などSEの演出も充実しているのだが、BGMが無駄に被る箇所があるのが残念。